かつては世界の18%を占めた日本のGDPも、今は6%程度です。尖閣列島問題が起こったのは、中国にGDPを抜かれた10年の9月でした。こうして日本は後進国化していくのです。単に、消費者がかわいそうだから、というだけが増税反対の理由ではありません。
このうえ、さらに税率が8%から10%に上がれば、日本の衰退がさらに加速することは明白です。私は学位論文を計量経済学で取った後、留学先で心理学を学び、現在は心理学のテキストや辞典を編纂中ですが、そんな中で常識的に知られている心理的概念の1つに「税の顕著性」というのがあります。
10%で税金の計算がしやすくなり、それを通じて、消費減退効果が拡大することが理論的にも実証的にも明らかにされています。詳細は省略しますが、これまでの税率アップより大きな消費減退効果をもたらす可能性があるのです。
増税派は「日本はまだ8%。よその国は20%もあるじゃないか」と反論してきますが、私が問題視しているのは、「税率の水準」ではなく「税率の変化」です。インフレ時に税率を上げても大した問題にはなりませんが、デフレのときに税率を上げると前述した通りの巨大なダメージが生じるのです。だから高度成長期に消費税を導入して少しずつ税率を上げていれば、20%でも30%でも問題なかったでしょうが、デフレの今は上げてはだめなのです。