ところが、武藤氏は自分の徴用工問題との関わりを一切ネグり、あたかも客観的な専門家のような体で、嫌韓とないまぜに“すべては文在寅大統領のせい”とする攻撃を繰り返している。武藤氏を重宝しているワイドショーも同様だ。武藤氏のことを「元駐韓大使」と紹介するだけで、徴用工判決をめぐって韓国側要人と面会したと韓国紙に報じられていることはおろか、「三菱重工の元顧問」という肩書すら、一切、触れようとしないのである。
そして、いまでは、この武藤氏の語っているフェイクも含んだ発言がまるで客観的事実のように流通し、MCや他の出演者も、その情報をおうむ返しのように口にするようになってしまった。
いや、問題は武藤氏発の情報だけではない。いま、日本のワイドショーがしたり顔で解説している文在寅政権攻撃には、韓国の民主化運動を弾圧した朴正煕軍事政権を源流とする右派勢力発の恣意的な情報も数多く含まれているのだ。そして、ワイドショーはこれらの情報をもとに、朴槿恵時代の強権政治や司法、メディアへの圧力をネグり、あたかも文在寅政権が独裁政治を行い、司法やメディアに圧力をかけているかのごとき恣意的な情報を垂れ流している。
その意味で言えば、日本の嫌韓報道は、日本国民の韓国への差別感情と敵対感情を煽っているだけではない。韓国の民主主義を後退させる行為にも加担しているのである。
(了)