核融合発電の実現に向けた研究をしている核融合科学研究所(岐阜県土岐市)は10日、重水素プラズマ実験でイオン温度1億2千万度を保った状態で、電子温度を6400万度まで上げることに成功したと発表した。
物質には、固体、液体、気体に次ぐ第4の状態として「プラズマ」がある。気体が超高温になり、イオンと電子がバラバラになった状態だ。
核融合発電は、海水からエネルギーが取り出せて、自国で燃料をまかなえる。二酸化炭素は排出せず、暴走や爆発をしないため、持続可能で環境負荷の少ないエネルギー源とされている。原子核同士を超高温で超高圧状態にして無理やりくっつけることで、別の原子核に変わる際に生まれる膨大なエネルギーを利用する。実現には、すでに1億2千万度を達成している「イオン温度」に加え、「電子温度」も同レベルに高めることが求められる。
同研究所の森崎友宏教授(プラズマ理工学)によると、実験ではプラズマにマイクロ波を入射して、電子を積極的に加熱。イオン温度1億2千万度を保ったまま、電子温度を従来の1・5倍にあたる6400万度まで上げることに成功したという。
これにより、重水素でプラズマを作ると、軽水素よりプラズマの性能が向上するという「同位体効果」が示され、今後のプラズマの高性能化につながるという。
森崎教授は「プラズマの温度領域を大幅に拡大できたのは大きな成果。今後はイオン温度と電子温度の両方で1億2千万度を達成したい」と話している。
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