経済・安保の司令塔創設、甘利氏ら首相に提言 中国に対抗
自民党のルール形成戦略議員連盟(会長・甘利明選挙対策委員長)は29日、経済や安全保障政策の司令塔の創設を求める提言を安倍晋三首相に提出した。米国の国家経済会議(NEC)をモデルに「日本版NEC」を首相官邸に設ける内容だ。米中の貿易摩擦はデジタルや宇宙空間の覇権争いと絡んでおり、司令塔を生かして国家主導で一元的に戦略を立てる中国に対抗する狙いがある。
甘利氏と同議連事務局長の中山展宏氏が官邸で首相と面会した。首相は日本企業も華為技術(ファーウェイ)との取引を再考している現状や欧米の対応にも触れ「NECのような機能を強めることは必要だ」と述べ、経済分野のインテリジェンス強化に理解を示した。省庁の縦割りを破り、政治主導で一元的な戦略を練る重要性にも触れた。
甘利氏は終了後、記者団に「日本は経済と諜報(ちょうほう)を一体で戦略を立てる各国の動きに極めて能天気だ。経済の裏にあるインテリジェンスの動きを常に把握できる体制にすべきだ」と訴えた。官邸の国家安全保障会議がNECの機能を担う案も検討すべきだとした。
提言は日本版NECについて首相をトップに外務、経済産業などの各省や警察庁が組み、統一した戦略を練る必要性を指摘した。デジタルや軍事で影響力を強めようとする中国への警戒感が背景だ。広域経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)、ファーウェイなどを列挙し、国家主導で世界経済の覇権を握る可能性に触れた。
甘利氏は首相との会談で、中国が経済的な手段で他国の外交や企業活動に影響を与える「エコノミック・ステートクラフト」を進めている事例を説明した。中国の監視システム「天網」が中国産の測位衛星やドローンの普及に伴い、自動運転車の開発や実用など企業活動や実社会への影響力を強める可能性を指摘した。超電導など日本企業の産業技術が海外で軍事転用されるリスクがあるとも話した。米国が中国を警戒し、ファーウェイなど中国5社から政府調達をしないよう昨年に法律で定め、中国企業の投資や買収への監視を強めていると紹介した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45420970Z20C19A5PP8000/
2019/5/29 20:00 日本経済新聞