中国共産党指導部はこのほど、「地方創生」のために、今後3年間で都市に住む1000万人の青年を地方に送るとの計画を発表した。これは中国の経済成長停滞を改善する方策のひとつとして、習近平最高指導部が掲げている地方創生・発展政策の一環。
しかし、1000万人の青年を地方に送ること自体が、かつての文化大革命(1966~1976年)における「上山下郷運動」を思い起こさせると懸念する声が強まっている。この運動は、毛沢東主席が都市部の中学生から大学生までの青少年に対して、「革命精神を農民から学ぼう」との号令をかけて、なかば強制的に地方に下放させたもの。米CNNが報じた。
文革時代の「上山下郷運動」では、合計1700万人の学生らが、学業を犠牲にして地方に半永久的に送られ、地方での肉体労働に従事しながら思想教育を受けさせられた。それらの青年たちは“失われた世代”と呼ばれ、大学教育や都市での知識、技術の習得を断念せざるを得なかった。
とはいえ、習氏も当時は「下放青年」の1人として、地方での生活で心と身体が鍛えられたという自身の経験から、現在の若者にも同様の経験を積むことを奨励している。習氏がかつて生活し学んだ陝西省梁家河地区はいまや共産党の聖地扱いとなり、多数の観光客で潤っているのも事実だ。
ある知識人は「習氏の政策に非難の声が上がれば上がるほど、習氏はむしろ強い意思を以てこの政策を推進しようとするだろう。米中貿易戦争で今後、都市部での失業率が上がり中国経済が悪化すれば、習氏にとって、地方創生に活路を見出さざるを得なくなるからだ」と指摘している。
https://www.news-postseven.com/archives/20190519_1374280.html