【5月9日 AFP】10代の捕虜を刺し殺し、民間人の少女や老人を狙撃し、住宅街に向けて重機関銃を乱射──2017年にイラク北部でイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦を展開していた米海軍特殊部隊「シールズ(SEALs)」のエリート隊長が、これらの戦争犯罪に手を染めたとして今月、軍法会議にかけられる。
共和党議員の中には、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の介入を求める動きもある。
シールズの特殊作戦部隊を率いてイラクやアフガニスタンで数々の戦闘任務をこなし、勲章を授与されたエドワード・ギャラガー(Edward Gallagher)隊長(39)は、軍法会議への出廷が命じられた今も多くの米国人にとっては英雄だ。
保守系のFOXニュース(Fox News)の扱いも英雄で、その存在は来年の米大統領選で争点となる可能性すらある。
米共和党の議員約40人は公開書簡で、今月28日の軍法会議開廷までギャラガー隊長を保釈せよと要求。議員の一人は公訴棄却を求め、トランプ大統領に介入するよう要請している。
トランプ大統領もツイッター(Twitter)への投稿で、銀星章の叙勲候補者にもなったギャラガー隊長の「これまでの国家への奉仕に敬意を表し」、軍法会議開廷までの拘束状況が「ただちに」緩和されるよう介入したことを明らかにした。
シールズ・チーム7(SEAL Team 7)の小隊長だったギャラガー隊長は昨年9月に逮捕され、米サンディエゴ海軍基地で拘束されている。
罪状は計画殺人、殺人未遂、司法妨害などで、有罪と認定されれば終身刑を言い渡される可能性がある。本人は全ての罪状を否認している。
専門紙ネービー・タイムズ(The Navy Times)と米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、ギャラガー隊長の素行に震え上がった小隊の複数の隊員が上官に訴え出たが、告発すれば自分たちのキャリアに傷がつくぞと警告されていたと報じた。
中略
ギャラガー隊長が戦争犯罪を犯したとされるのは2017年、イラク北部の要衝モスル(Mosul)をISから奪還する作戦で米特殊部隊がイラク軍と共闘していたときだ。
昨年11月の査問委員会では、同隊長が率いていたアルファ小隊の隊員らが、その振る舞いに非常に迷惑するあまり隊長の狙撃銃に細工して照準が定まらないようにしたり、隊長が民間人を銃撃する前に警告発砲して人々を逃がしたりしていたと証言した。
「隊員たちは、ISIS(ISの別称)と戦うよりも、民間人の保護により多くの時間を費やしていたと証言した」と、米海軍犯罪捜査局(NCIS)の特別捜査官は査問会で述べている。
ニューヨーク・タイムズによれば、ギャラガー隊長は殺害した人数を自慢し、犠牲者の中には女性も複数含まれていたという。
また、2017年5月にイラク軍が負傷したISの少年兵を拘束した際には、15歳前後と思われるこの少年兵を衛生兵が手当てしているところへギャラガー隊長が無言で割って入り、首と脇腹をナイフで何度も刺したと隊員2人が証言している。
その後、同隊長は片手で少年兵の頭をわしづかみにし、もう一方の手にナイフを握って記念撮影をした。さらに、少年兵の遺体をまたいで立ち、部下の一人に米国旗を持たせて再入隊式の宣誓のまね事をしてみせたという。(c)AFP/Laurent BANGUET
https://www.afpbb.com/articles/-/3223075