2019/3/9 06:50神戸新聞NEXT
シンコ不漁1キロ4000円 販売2日のみ、遠のく食卓 神戸
シンコの歴史的な不漁が庶民の台所を直撃した。大阪湾ではわずか3日で漁を終了し、例年は「くぎ煮」用に買い求める主婦らでにぎわう鮮魚店からも、シンコは姿を消した。「春に欠かせない食材。何とか復活してほしい」。消費者も漁業者も切望した。
「神戸の台所」として親しまれる東山商店街(神戸市兵庫区)。鮮魚売り場からシンコは消え、あっても1キロ当たり3千円台後半~4千円の高値が付いた。
淡路島の岩屋港などから仕入れる鮮魚店「明石屋丸徳」が販売できたのは2日間のみ。「不漁とされたおととしよりも悪い。過去最悪だと思う」と従業員の山本陵平さん(35)。店を訪れる客や入荷の有無を尋ねる電話は後を絶たず、「楽しみに待っていた人が諦めて帰る姿を見るとつらい」。
同区の主婦(63)は、袋詰めされたシンコを見つけて値段を聞いたが、高額で購入を断念。「初日に1キロだけ買えたのが最後」と残念がった。「ここ数年、不漁が続いて心配。なくならないでほしい」と願った。
小売業者らも気をもむ。トーホー(神戸市東灘区)は、播磨灘で漁をする漁業者から仕入れるが、担当者は「不漁続きで、今年は昨年よりも入荷量が減っている」。この時期はくぎ煮に使う砂糖やしょうゆ、ショウガの販売も増えるといい、「シンコ漁の有無で売り上げが変わる。状況の好転を祈るしかない」と話す。
兵庫県内の郵便局で販売するくぎ煮用の容器をセットにした通称「いかなごレターパック」。神戸中央郵便局(同市中央区)によると、現時点で今年の取扱量は例年並みだが、漁期の短縮で最終的な取扱量は減るとみる。担当者は「確実な売り上げが見込まれるサービス。正直痛い」とする。
「魚を捕れずに高値となってしまい申し訳ない」。シンコ漁の打ち切りに踏み切った漁師松林義文さん(63)=神戸市垂水区=は肩を落とす。シンコ漁は年間収入の3分の1を占め、生活への影響も避けられない。「30年ほど前から休漁日をつくり、親魚の漁もやめてきたが今年の不漁はひどい。少しでも多くの魚を残し、将来のシンコ漁を守りたい」と話した。(津田和納、三島大一郎、山路 進)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201903/0012129859.shtml