「毎月勤労統計」の賃金偽装やGDPかさ上げなど、統計のインチキが相次いでいるが、まだまだ怪しい統計があった。安倍政権になって急増した「貯蓄ゼロ世帯」が、なぜか昨年、大幅に改善しているのだ。もちろんアベノミクスの成果ではない。本紙の取材でそのカラクリが明らかになった。
「金融広報中央委員会」(事務局・日銀内)は毎年、「家計の金融行動に関する世論調査」を行っている。「金融資産を保有していない」“貯蓄ゼロ世帯”は別表の通り。民主党政権から安倍政権になって以降、2人以上世帯、単身世帯とも激増。単身世帯では半分近くが貯蓄ゼロだ。安倍首相は、雇用創出により、総雇用者所得が増えたと喧伝するが、貯蓄ゼロ世帯の増加は、家計が苦しくて仕事に出ても、貯蓄ができない庶民の生活を物語っている。
ところが、2018年になると貯蓄ゼロ世帯の数値が大幅に「改善」されている。2人以上世帯で8.5ポイント、単身世帯で7.8ポイントも前年より激減しているのだ。18年は、厚労省の毎勤統計の賃金偽装があった。貯蓄ゼロ世帯の改善も何だかきな臭い。金融広報中央委員会に聞いた。
「18年から質問方法を変更したことがひとつの要因です。金融資産は、将来に備えた預貯金だけでなく、株の運用や掛け捨てでない保険、例えば、学資保険、養老保険、傷害保険なども含まれます。17年までの質問方法では、預貯金以外の金融資産がある人の一部も、『保有しない』に回答していたと考えられ、内部で検討した結果、質問方法を変更しました。変更は発表資料にも明記しています。質問方法が変わったので、過去の数値との比較はあまりできないですね」(事務局)
厚労省は18年の毎勤統計を注釈も付けずに上振れ補正。補正していない過去の数値と比べて、賃金の伸びを誇大に見せた。金融広報中央委員会の場合は、質問方法変更の注釈も付けて、理由も明快。過去との非連続性も明言した。
金融広報中央委員会は事務局が日銀に置かれているものの、金融経済団体、報道機関、消費者団体などの代表者や学識経験者で構成され「中立・公正」がモットーだとしている。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「安倍政権によって貯蓄ゼロ世帯が年々、増加している中での方法の変更は、安倍政権の失政を隠すことにつながります。このタイミングでの変更は少なからず、日銀や安倍政権の意向があった可能性があります。もっとも独立機関として、公表時に変更を告げ、理由を明確にするなど透明性は最低限、担保しています。毎勤の厚労省やGDPの内閣府などよりはよっぽどマシだといえます。省庁が実施している統計も、独立機関にやらせることを考えた方がいいかもしれません。また、統計方法変更による数値改善をメディアがしっかり報じるべきです」
貯蓄ゼロ世帯の数値改善はアベノミクスの手柄ではない――。肝に銘じておこう。
また怪統計か 2018年「貯蓄ゼロ世帯」大幅改善のカラクリ|日刊ゲンダイDIGITAL
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