北海道電力泊原発3号機(後志管内泊村)で、非常用発電機の不具合が2009年12月の運転開始から9年間にわたり放置されていたことが分かった。
非常用電源は、停電などで外部からの電力供給が途絶えた場合に安全を守る「とりで」だ。
万一動かなければ、原子炉が冷却できなくなり、過酷事故につながる恐れがある。
現に、この間、東京電力福島第1原発事故が起きている。非常用電源が津波で全滅し、原子炉の緊急冷却装置が作動しなかった。
原発事業者として、この惨事を目の当たりにしながら、非常用電源の不具合を見逃してきたのは、驚くべき失態と言うほかない。
原発を動かす資質を疑われても仕方あるまい。
不具合は先月の点検時に泊3号機の非常用発電機2台のうち1台が動かないトラブルが起きて発覚した。発電機の制御盤にねじで固定されているはずの端子2本のうち1本が外れていた。
9月の胆振東部地震に伴う全域停電(ブラックアウト)の際に、作動はしたものの、もし動かなければ重大事故につながった可能性も否定できないのではないか。
北電は、このことを真摯(しんし)に受け止める必要がある。
泊原発の非常用発電機を巡っては、07年と09年にも異物混入などが原因で不具合が生じ、原子炉を停止するトラブルが起きた。
その都度、点検を強化してきたはずだが、経験が生かされたとは到底言い難い。
原子力規制委員会の更田豊志委員長が「泊原発は非常用発電機に関しておかしくないか」と厳しく批判し、北電の対応を検証する方針を示したのは当然だ。
規制委の調査を待たずとも、自ら原因を徹底的に究明し、検査体制を見直さねばならない。
北電の情報公開に対する姿勢にも問題がある。
原発に関するトラブルを電力会社が隠蔽(いんぺい)する体質はこれまでも批判されてきた。
今回も泊原発内で開かれた会議に出席した規制委の担当者が気づいて指摘したという。これを受け、北電は発生から13日後にホームページで公表したが、報道発表はしなかった。
都合の悪い事実を矮小(わいしょう)化しようとする意図が透けて見える。
たとえささいなトラブルでも、迅速に公表し、原因を丁寧に説明する努力をしなければ、原発に対する不信は増す一方だろう。
ソース
泊非常電源不備 原発事業者の資質疑う:どうしん電子版(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/255507