2014年4月に消費税率が8%に引き上げられて以降、制度を悪用した不正還付事案が急増しているなどとして、
国税庁は7月、東京と大阪両国税局に消費税事案の情報収集や調査などを担当する専門部署を新設する。
来年10月には税率10%への引き上げも予定されており、不正事案の防止や対策強化を図る狙いがある。
国税庁によると、法人の不正還付に対する消費税の追徴税額(加算税を含む)は、
14事務年度(14年7月~15年6月)の約11億円に比べ、16事務年度(16年7月~17年6月)では約128億円と12倍に増えた。
8%への税率引き上げなどが要因とみられる。
そのため、「消費税に着目した調査や事例の集積などが必要」(同庁担当者)と、
複雑で調査困難な案件を扱う東京、大阪の課税1部に専門チームを設置することにした。
チームには課長級の「統括国税実査官」1人を配置し、法人や国際取引などの専門知識がある
職員数人で編成。全国の不正還付が疑われる事案を中心に情報収集・分析し、調査の企画・立案などを担当する。
消費税は国内で消費される取引に課税されるため、海外に輸出する取引には消費税がかからず、
国内での仕入れ時にかかった消費税額分は申告すれば還付される。この制度を悪用し、
仕入れの消費税額を水増ししたり、国内で販売したにもかかわらず「海外に輸出した」と偽ったりして還付申告し、
不正に国から還付を受けるケースが相次いでいる。
東京地検特捜部は3月、実際は仕入れていない化粧品などを仕入れたように装って計上し、
消費税など計約2億6000万円を不正に還付を受けたとして、消費税法違反などの疑いで
東京都港区の化粧品販売会社の代表取締役の女を逮捕、起訴した。
不正還付を巡っては、国が11年、申告段階でも処罰できる未遂罪を新設し罰則も強化。
12年からは還付の申告段階で明細書の添付も義務化した。国税庁は「消費税は納税者の関心も高い。
調査のノウハウを蓄積して不正事案への監視を強化し、消費税制の信頼を確保したい」と話す。
http://mainichi.jp/articles/20180627/ddf/007/040/008000c