■誰も得をしない値上げ
原価のアップに苦しむ外食、集客の目玉を奪われた大手小売り、客が戻ってこない中小酒販店、出荷量減少に苦しむメーカー、そして高いビールを飲まなくてはいけない消費者。“五方一両損”の様相を呈している。
ビール系飲料の大手小売店店頭での価格は高止まりしている(埼玉県内のスーパー)
https://www.nikkei.com/content/pic/20180531/96958A9F889DE1E3E3EAE4E6E7E2E1E3E2E7E0E2E3EA8698E3E2E2E2-DSXMZO3118705031052018000001-PN1-3.jpg
ただ、そんな安売り規制にも、大きな効用があると指摘する声がある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の角山智信シニアアナリストは「“とりあえず生”という時代は終わった。(安売り規制をきっかけに)メーカーは販売奨励金などをつぎ込む無益なシェア争いを見直して利益を確保し、それを商品開発などにあて、新たな需要を生み出す力を追い始めた」と話す。一部の流通業者の中には、利益率が改善する兆しもある。
値上げの逆風が吹くなか、アサヒビールが飲食店に供給する樽(たる)入り生ビールの品ぞろえに欧州の高級ビールを加えるなど、メーカー各社も市場の活性化に奔走している。これから人口減少が本格化し、国内市場の縮小は避けられない。今回の規制はメーカーや流通業者に消耗戦を抜け出し、価格に代わる価値を生み出すよう迫っている。
(了)