【5月13日 AFP】カナダ・ケベック(Quebec)州のココア工場跡で、倉庫の壁に開けられた小さな穴から入ってくる新鮮な空気が、からまったケーブルに接続されブーンと音を立てているプロセッサー数千台を冷やしている。
イエスル・クリバリ(Yessoulou Coulibaly)氏が監視しているのは7000台余りのコンピューターだ。暗号通貨「マイニング(採掘)」ブームの新興企業の一つであるビットファームズ(Bitfarms)が工業団地の奥にあるこの施設を運営している。
ドルやユーロと違って暗号通貨は中央銀行によって発行されるものではなくマイニングされるもの。つまりここモントリオール郊外のサンティアサント(Saint-Hyacinthe)にあるようなサーバー「ファーム」で作り出されるものだ。
大規模なマイニングには膨大な計算能力が必要で、それには大量の電力が必要となる。そこでケベック州の出番だ。暗号通貨企業の集中が進むアイスランドと同様に豊富で安価な電力があり気温も冷涼なケベック州にマイニング企業が引き付けられる。
クリバリ氏はケベック州を新興分野のシリコンバレー(Silicon Valley)に変えようと同地に殺到した企業家の一人だ。
だが完全に理解している者がほとんどいないこの業界が電力需要を急増させ停電を招きかねないとの懸念から、当局には警戒する声もある。
3月にはケベック州の多数の地方自治体が暗号通貨の新マイニング施設の一時停止措置を取った。同州政府および電力公社ハイドロケベック(Hydro-Quebec)は新プロジェクトを停止して暗号通貨技術とその広範な経済的影響の把握に努めている。
始めに待ったをかけたのはモントリオールの東に位置する小さな自治体ブロモン(Bromont)だった。同地では1件の新たなビットコイン(Bitcoin)事業が同市の総余剰有能電力36メガワットのうち30メガワットの使用を求めていた。
その後、近隣のブロム・ミシスクワ(Brome-Missisquoi)でもビットコイン採掘事業者に同様の禁止措置を取った。「われわれの地方で暗号通貨をマイニングするコンピューター倉庫の開設を求める事業の大半は、極めてわずかな雇用創出しかもたらさない」と同町の行政官、ロベール・デマレ(Robert Desmarais)氏は指摘する。
ハイドロケベックの広報担当マーク・アントワーヌ・プリオ(Marc-Antoine Pouliot)氏によるとこの動きは中国が暗号通貨取引の規制に乗り出した後の昨年9月に始まった。同氏は「この業界の将来は予想できない」と述べ、当局はどうすればケベック州内で各プロジェクトが持続可能な形で確立され得るのか知りたがっており、電気料金引上げの可能性も排除していないと説明した。
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http://www.afpbb.com/articles/-/3174296