スイス・バーゼル(CNN) 自らの意思で死を迎えるためにオーストラリアからスイスへ渡航した104歳の科学者。もはや自分の人生に生きる価値はなくなったと言い切り、これをきっかけに他国でも安楽死が合法化されることを望むと語る。CNNは8日、バーゼルのホテルで、死を前にしたデービッド・グッダルさんにインタビューした。
今月上旬、西オーストラリア州パースの自宅を離れ、スイスに到着したグッダルさんは、植物学と生態学の研究者。バーゼルにあるライフサークル・クリニックで、10日に死を迎える。
12人の孫の祖父でもあり、安楽死推進団体には何年も前に加入した。身体が不自由になったことや、視力の衰えも一因となって、5~10年ほど前から人生が楽しくなくなったと振り返る。
「フィールドワークが私の人生だった。だがもうフィールドへ出ることはできない」
今はどこへ行くにも車椅子に頼る生活。「もう1度、草原を歩き回って、周囲を見渡すことができたら、どんなに素晴らしいだろうと思う」
「まだ小鳥のさえずりを楽しむことはできるが、視力の低下が深刻な妨げになる」
1998年に運転免許が持てなくなった時点で死んでいればよかったとグッダルさんは語り、94歳で自立した生活ができなくなったことは、人生の大きな転機だったと言い添えた。
「朝起きて、朝食を食べる。それから昼時までただ座っている。それから少し昼食を食べ、ただ座る。それが何の役に立つのか」
オーストラリアでは安楽死は合法化されていない。ビクトリア州は2019年半ばから安楽死を認める計画だが、グッダルさんが住んでいた西オーストラリア州では、合法化の是非を巡って論議が続く。
グッダルさんは数週間前に自殺を試み、目が覚めると病院のベッドにいた。この病院の医師に、自害の危険があると判断されたことから、娘が手配した精神鑑定を受けるまで、退院させてもらえなかった。
病院のそうした処遇を「残酷」とグッダルさんは形容し、「人に生きる目的がなくなっても、無理やり生き続けることを強いる」と訴える。
https://www.cnn.co.jp/world/35118875.html