オリにかかるとスマホで操作、食害鹿の捕獲進む
農家を悩ませる鹿の食害対策として、兵庫県立大(兵庫県丹波市)と三重県農業研究所(松阪市)による同県伊賀市阿波地区での捕獲実験が、大きな成果を上げている。
防護柵の切れ目に罠のオリを置いてカメラで監視し、かかると、スマートフォンで遠隔操作をして入り口を閉じる仕組み。こうした柵と捕獲の併用が奏功し、3年2か月で440頭捕らえ、農業被害はほとんどゼロ。同研究所などは「対策の切り札になる」として県内外にPRしていく。
阿波地区7集落のうち、子延、下阿波の2集落は、レタスなどの葉物野菜が全て鹿に食べられ、年800万円に上る深刻な被害が出ていた。集落を防護柵で囲うと被害は減ったが、河川や道路などで柵が途切れる箇所があり、そこから鹿の侵入が続いていた。
同研究所などは農林水産省の研究費補助を受け、2集落の計約150平方キロで2014年の夏から年末にかけて、オリ(5メートル四方、高さ2メートル)を設置した。
太陽光発電で24時間稼働するカメラが、インターネットで県職員や地元の獣害対策委員ら6人のスマホに、8基のオリの様子をライブ映像で届ける。鹿がオリに近づくとスマホの警告音が鳴り、映像を見ながらボタン操作をすると、入り口を閉じて捕獲できる。
同研究所などは、複数のオリをスマホで一元管理するこの仕組みを「クラウドまるみえホカクン」と命名。オリの中に干し草などオトリの餌を置くなど、日常の管理は地元住民が担当。捕獲した鹿は、同市山畑の「いがまち山里の幸利活用組合かじか」(中森秀治組合長)が食肉に加工する。
子延の獣害対策委員長、芝田喜比古さん(69)は「ほとんど鹿の被害がなくなった」と言い、下阿波の男性(71)も「レタスや菜種が全滅して農業を諦めたが、捕獲の効果が表れ、野菜作りを再開した人もいる」と喜ぶ。
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