さいたま市は、保護者の勤務時間や世帯構成などを点数化し、高い順に希望する認可施設に割り振っている。保護者は自分で順位を付けて施設を何カ所でも希望できるうえ、兄弟姉妹がいる場合は「同じ施設を望む」「別々の施設でも近くなら良い」などと細かく要望を伝える。条件が多い分、市側の作業も複雑になる。
昨年の4月の入所希望者は7990人。1月に約30人の職員が休日に朝から晩までかけても割り振りは終わらなかった。平日の閉庁後にも集まり、計約50時間かけて作業を終えたという。
一方で富士通と九州大などが昨年夏、AIを活用して同じ作業をする実証実験をしたところ、わずか数秒で終了した。割り振りの結果は職員の手作業とほぼ同じだった。
市の担当者は「導入は未定」としつつ「作業が早く終われば結果を保護者に早く通知できる。希望がかなわなかった人は認可外施設を早く探せるようになるはずだ」と語り、市民にもメリットがあると説明する。このサービスは年度内に製品化され、更に別の2自治体でも今年度中に実証実験が行われる予定という。
ただし、AIを活用しても施設の定員に限りがあるため、希望する施設に入れないケースはなくならない。2年前に当時1歳の長女を認可保育施設に預けようとして「落選」した同市浦和区の女性(30)は「AIで職員の作業は楽になるだろうが、住民にどんな利点があるのか」と疑問を口にした。落選の通知が郵送されてきた時には、預けられる施設の情報提供などもなく、どうしていいか分からなかったという。「AIで労力や経費が削減されるなら、落選を紙で知らせるだけでなく、その後の対応を手厚くしてほしい」と注文した。
三菱総合研究所の村上文洋主席研究員は「人口減が進んで財政も逼迫(ひっぱく)する中、自治体もAIの活用は避けられない。AIにできることはAIに任せ、人は人にしかできないことを重点的に行うべきだろう」と話す。 ・・・・・・・・・・・・・