「経済発展で民主化」という幻想
だが、なぜここまで「中国脅威論」が盛り上がっているのだろうか。
その理由の一つは、アメリカをはじめ、欧米で語られてきた、「中国が経済的に発展すれば民主化する」という幻想が
崩れ始めたからだと言える。
米保守紙のウォール・ストリート・ジャーナルで中国担当のコラムニストを務める、アンドリュー・ブラウン氏は、
中国と距離を取り始めたオーストラリアのマルコム・ターンブル首相を例に、今後の対中関係について以下のように述べた
「欧米諸国と中国の関係は数十年にわたり、幻想と偽りの上に成り立ってきた。
今は中央集権型で権威主義に満ちた中国の制度も、いつかは自分たちのようにオープンで民主的なものに変わる――。
欧米の政治家たちはそう信じて、自らをごまかしてきた。かたや中国側は、グローバルな野望をひた隠してきた。(中略)
この見せかけのゲームも、そろそろ終わりを迎える時だろう」
「中国はオーストラリアのような対象国のエリート層に企業の閑職やコンサルタント契約を提供し、相手を取り込んでいく。
中国共産党の支部を通して各国の中国語ニュースメディアを買収し、現地に住む自国民に近づいていく。
そのかたわらで検閲システム『金盾(グレート・ファイアウォール)』を使い、国内では欧米メディアのコンテンツを制限する。
海外の非政府団体(NGO)も警察当局に監視させ、その影響力を押さえ込んでいる。(中略)
欧米の政治家たちはようやく、中国を自分たちが望む姿ではなく、ありのままの姿でとらえつつある」