人間の瞳孔はうそが下手だ。
科学者らはずっと前から分かっていた。人はうそをつく時、瞳孔がかすかに拡張する。ただ、ごくわずか変化なので、普通の人は気付かない。
しかし、米ユタ州に拠点を置くコンベラスという企業が、カメラを使って眼球の動きを追跡し、うそを感知する検査技術を開発した。「アイディテクト」と呼ばれるこの技術は、長年うそを見破るのに一般に用いられてきたポリグラフ検査に比べコストが安く、よりバイアスの少ない手段として人気が高まっている。
2014年に発売されたアイディテクトは、現在34カ国で就職面接や企業調査の一環として利用されている。例えば、中南米の銀行では、自行の窓口係が信用できるか否かを判断する手段としてこの技術を利用している。このアイディテクトの確度は、ポリグラフと同様に90%近いことが調査で示されている。
アイディテクトの被験者は机に座り、タブレット上で〇×式の質問に答える。その間、赤外線カメラが被験者の眼球の動き、まばたき、瞳孔の拡張を追跡する。そして30分後、アルゴリズムが被験者のうその度合いを0~100の尺度で採点する。
アイディテクトの装置の価格は4000ドル(約45万円)で、さらにテスト1回ごとに50~150ドルの費用がかかる。一方、ポリグラフ検査の費用は数百ドル以上で、調査内容によって変わる。いくつかのテストでは連邦政府は2200ドルも払っている。
米国では、一部の地方捜査当局や民間調査機関がアイディテクトを使用し始めている。
コンベラスは当初、米国外での普及に注力していた。米国には民間の雇用者がうそ発見検査を誰に対して行えるか制限する法律があるためだ。ただ、政府の職に関しては例外がある。ポリグラフが政府の採用活動の妨げとなるなか、コンベラスは今、米国内でのアイディテクトの利用拡大に力を入れている。
コンベラスやユタ州の科学者らによると、米連邦政府によるアイディテクトの導入はなかなか進んでいない。
米下院は今夏、税関・国境警備局(CBP)の人員不足に対処するため、入局志願者へのポリグラフ検査の義務付けを撤廃する法案を可決した。同法案の支持者らは、ポリグラフ検査には欠陥があり、これが欠員の補充をさらに困難にしていると指摘している。
連邦機関で実施されるポリグラフ検査の監督当局は、まだアイディテクトを承認していない。同当局のお墨付きを得れば、アイディテクトが連邦政府内で使用される道が開かれる可能性もある。
同当局の広報担当者はCNNに、来年からアイディテクトなどの視覚的信頼性検査の研究・評価を開始すると明らかにした。
コンベラスの最高経営責任者(CEO)、トッド・ミケルソン氏によると、同社の収益の8割は、銀行や企業など、これまでポリグラフを使ったことがない顧客から来ているという。これらの銀行や企業がコンベラスの技術を利用する目的は、従業員が信頼可能であることを確かめ、不正を防止することにある。
https://www.cnn.co.jp/m/tech/35110239.html