今回の規約変更を受け、データセンター事業者のさくらインターネットは12月21日、GeForceを搭載したサーバーの
新規利用を停止した。同社の場合は、規約が禁じている「データセンターでの利用」であるのは間違いない。
だが、企業や研究機関はこういった商用データセンターだけでなく、自前のサーバールームにもシステムを
構築していることがままある。こういった環境での利用はどうなるのか、基準が判然としないのだ。
(略)
それでも規約変更に踏み切ったのは、「AI用の半導体は現状では、ほかにあまり選択肢がない」という現状を
楽観視した可能性がある。だが、その現状は決して盤石ではない。それどころか、規約変更を契機に急速に
揺らぐことも考え得る。
「早晩、グーグルが提供するクラウド型のAIコンピューティングサービスなどに乗り換えることになるだろう」。
そう断言するのは、IT企業・バクフーの柏野雄太社長だ。
(略)
グーグルは自社のクラウドサービスに、独自開発したTPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)というAI用半導体を
搭載している。従来はエヌビディアのGPUに依存してきたが、これを順次独自のTPUに切り替えているようだ。
グーグルはTPUを外部販売こそしていないが、柏野社長のようにグーグルのAIサービスを利用する企業が増えれば、
長期的にはエヌビディアのライバルになるといえる。
■第2の選択肢を求める動きが加速する
ライバルはグーグルだけではない。半導体最大手のインテルは「FPGA」と呼ばれる半導体の開発生産を強化しており、
AI用での出遅れを挽回しようとしている。AI用半導体ベンチャーの英グラフコアには、韓国サムスン電子や自動車部品
大手の独ボッシュなどが出資している。
そもそも基幹部品が特定の1社からしか調達できないというのは、それを買い付ける企業にとっては非常にリスクの
大きい状況だ。取引関係が足元で良好でも、リスク回避策として複数企業からの調達を目指すのが企業の常識である。
AI分野におけるエヌビディアの圧倒的に強い立場に顧客企業が満足していたわけでは決してなく、今回の規約変更を
機に「第2の選択肢」を求める動きは加速度的に進むだろう。「AI用半導体ならエヌビディア」という地位は、ごく短期間の
「三日天下」に終わりかねない。
おわり