テレビで中継を見ていて異変に気付いていたのが、松島小島にある避難小屋の管理人を務める漁師の吉田修策さん(67)だった。
ニュース映像に映し出される、乗組員が着ているジャンパーや、船に積まれたオートバイ……。
「全部、オレのだ!」
12月3日、海保が木造船を函館沖に曳航(えいこう)する。
吉田さんが北海道警の警察官らと島に上陸したのは12月4日のことだった。吉田さんが振り返る。
「奴らが来る前に島に行ったのは、11月10日で発電機に使う軽油を運んだんだ。
その時はもちろん普通だったよ。あの小屋は漁の時に漁師たちが寝泊まりできるように何でも揃っているんだから。
たまたま島に流れ着いてね、生きるために飲み物や食い物を使わせて貰ったというならいいよ。
でも奴らときたら、700キロもある発電機やボイラー、灯台用のソーラーパネル、磯舟の巻き上げ機といった大物はもちろん、
オレのバイクや船外機、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、コンポ、ガスレンジ、オーブン……フライパンまで全部、持っていったんだ。驚くというより、呆然としたね。ここまでやるか! と。400リットル入る燃料タンクまで持っていったんだよ。その上、山ほどあった薪は1本残らず燃やしてやがるし、酒は空けるわ、食い散らかすわで、
すっかり廃墟にされていた……」