人口減や車の燃費向上などでガソリン需要が減るなか、経営難や後継者不足で廃業する給油所が増えている。九州では過去22年間で給油所の4割超が消えた。過疎地では日々の暮らしにも影響が出ており、自治体が独自に予算を付けて給油所再開を後押しするなど、対策に乗り出した。
高齢者が半数近くを占める人口約1700人の宮崎県小林市の須木(すき)地区で4年前、唯一の給油所が廃業した。
数年前に地下タンクの規制が厳しくなったのも原因の一つとなり、個人経営で経営不振が閉鎖の理由となった。
地区の農家はビニールハウスの加温機や農業機械の燃料として使う灯油や軽油などを、廃業した給油所に配達してもらっていた。別の給油所まで最も近いところで車で30分近くかかる。配達費が高くなり、給油所再開を求める声が上がった。
市は給油所を多店舗展開する地元JAに依頼。市が燃料配達用トラックの購入費450万円と、配達に伴う人件費200万円を負担する条件で2014年1月、半年ぶりに再開した。初年度の経費は過疎地域の自立活性化を推進する国の交付金でまかなったが、15年度以降、年200万円の人件費を一般財源から支出している。
市の担当者は「給油所は山間部の過疎地域では大切なライフライン。今後も続けていきたい」と話している。
人口約1300人、65歳以上の高齢者が51%を占める大分県杵築(きつき)市の大田地区。冬は雪が積もり、ストーブが欠かせない。住民は地区に5カ所あった給油所で灯油を買っていたが、13年までに1カ所に減少。運転ができない人もおり、とりわけ高齢住民は不便を強いられていた。そこで地元のおおた青年会や県、市、給油所が対応を協議し、県などが費用負担して希望家庭に小型の灯油タンクの設置を決め、これまで100戸に取り付けた。
経済産業省は通常の給油所のように地下タンクを設けず、地上タンク(容量約600リットル)にガソリンを保管する「ミニ給油所」の設置を後押ししている。設置工事費が通常の3分の1程度に抑えられ、国の補助も受けられる。七つの有人島で構成される鹿児島県十島村では12月、このうち宝島にミニ給油所が完成する。村は要望に応じて他の島にも設置する方針だ。
■20年余で半減
資源エネルギー庁によると、全国の給油所はピークの1994年度末に6万421カ所あったが、16年度末には3万1467カ所とほぼ半減。九州ではこの間に46.8%減り、16年度末は4369カ所だった。国は給油所が3カ所以下の市町村を「給油所過疎地」と位置付けており、今年3月時点で302。このうち九州・山口は28町村だった。
https://mainichi.jp/articles/20171115/k00/00e/040/303000c