「このシンガポールの会社経営者とパパマッサタ氏は非常に親しい関係だったことに加え、
パパマッサタ氏がその時期にパリで高級時計など1600万円の買い物をしていたことなどが判明しています。
あまりのタイミングの良さに“疑惑”が深まったのです」
もちろん、この情報はあくまで「カネの流れがあった」というだけで、それが買収工作に用いられたという根拠は示されていない。
しかし、ブラジルでの逮捕から約2週間後に、世界が驚く“新証拠”が飛び出したのである。
◆マドリードを阻止する
それを報じたのは10月20日付のフランスの高級紙『ル・モンド』だった。東京開催が決まったIOC総会中に、パパマッサタ氏が父・ラミン氏に送ったメールの内容が明らかにされたのだ。
「(東京と開催都市を争っている)マドリードへ投票するようアフリカ諸国への働き掛けが全力で行なわれている。休憩時間になんとかせねばならない」
息子からの焦りのメールを受け取ったラミン氏は、「後で話をしよう」と短く返信した──。
「このメールはディアク親子が、東京招致に向けた票の取りまとめを行なったことを示す証拠だと『ル・モンド』は報じ、
世界中でビッグニュースとして扱われました」(前出・山田氏)
ただし、日本では全国紙のうち朝日と読売が触れたものの、欧米に比べると扱いは小さく、いずれも〈仏紙ルモンドが20日伝えた〉(朝日・21日朝刊)、
〈仏紙ル・モンドが報じた〉(読売・22日)という引用形式だった。ジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。
「五輪招致には、広告代理店の『電通』がかかわっていることもあり、各メディアは扱いにくい。各紙が独自取材をしないのは、そうした事情も絡んでいるのでしょう」
◆五輪「剥奪」の可能性
フランスの検察当局の捜査は日本にも及んでいた。今年2月、東京地検特捜部がJOC(日本オリンピック委員会)の竹田恆和会長を任意で事情聴取した。
竹田会長は不正を否定したが、他にも複数の関係者が聴取を受けたという。