「パナマ文書」報道の女性記者 爆弾で殺害
10月17日 14時29分
地中海の島国マルタで16日、いわゆる「パナマ文書」の報道に加わった地元の女性記者の運転する車が爆発し、女性は殺害されました。調査報道を続けてきた記者が、爆弾で殺害されたことに衝撃が広がっています。
地中海の島国マルタの地元メディアによりますと、16日、マルタ本島北部で地元の記者、ダフネ・カルアナガリチアさん(53)の運転する車が自宅を出発した直後に爆発しました。
車は道路脇にある畑まで吹き飛ばされて大破し、カルアナガリチアさんは死亡しました。
カルアナガリチアさんは、マルタで政治家の腐敗を厳しく追及する記者として知られていて、世界各国の首脳などによる資産隠しや課税逃れを暴いた「パナマ文書」の調査報道にも加わり、マルタのムスカット首相の妻が中米パナマに会社を置いて資産を隠していたとする疑惑を報じていました。
ムスカット首相は、カルアナガリチアさんは殺害されたとして「彼女は私にとって最も厳しい批判者だったが、このような野蛮な行為は正当化できない。報道の自由に対する攻撃だ」と非難し、徹底的に捜査するよう関係機関に指示しました。
地元メディアは、カルアナガリチアさんが殺害の2週間前に脅迫を受けているとして、警察に相談をしていたと伝えるなど、調査報道を続けてきた記者が殺害されたことに、衝撃が広がっています。
市民3000人が集まり追悼
地中海の島国マルタで、いわゆる「パナマ文書」の報道に加わった地元の女性記者、ダフネ・カルアナガリチアさんが爆弾で殺害されたことを受けて、マルタの首都バレッタに近い街、セント・ジュリアンでは、16日夜、市民およそ3000人が集まりカルアナガリチアさんの死を悼みました。
集まった人たちは、火をともしたキャンドルを手に、港までのおよそ1キロ余りを歩いたあと、港のモニュメントにキャンドルなどを並べて、カルアナガリチアさんの死を悼んでいました。
参加したカルアナガリチアさんの家族の友人の男性は「きょうはマルタにとってとても悲しい日となりました。この凶悪な行為は人類に対する犯罪であるだけでなく、民主主義の根幹に対する犯罪です」と話していました。
このほか、EU=ヨーロッパ連合の議会にあたるヨーロッパ議会のタイヤーニ議長が、自身のツイッターで「真実を求めてみずからの命を犠牲にしたジャーナリストの悲劇的な実例となった」と述べるなど、カルアナガリチアさんを追悼する動きが広がっています。
パナマ文書とは
「パナマ文書」は中米パナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」からおととし流出した内部資料で、顧客が租税回避地=タックスヘイブンに設立したペーパー会社などおよそ21万社に関する膨大なデータが含まれ、「史上最大のリーク」と言われています。
アメリカに本部がある「ICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合」が世界およそ80か国、400人のジャーナリストと連携して分析を進め、各国の首脳や富裕層らがタックスヘイブンの実態のないペーパー会社を使って金融取引を行ったり、資産隠しをしたりしていた実態が次々と明らかになりました。
また、世界各地で抗議デモが相次ぎ、アイスランドの首相やスペインの閣僚が辞任に追い込まれました。
「パナマ文書」は、G20やG7などの国際会議でも主要なテーマの1つとしても取り上げられ、文書をきっかけに富裕層や多国籍企業による課税逃れを防ぐための、国際的な協調態勢を強化する議論も進んでいます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171017/k1001