(抜粋)
無理やりにでもメスに相手をしてもらいたいオスと、気に入らないオスをなるべく避けたいメスとの利害が対立したことで、カモのペニスと膣は互いに逆向きとなるらせん状に進化を遂げた。ブレナン氏はこの事実から、オス同士の競争はペニスに影響を及ぼさないのだろうか、と疑問に思った。
その答えを探るため、ブレナン氏らは繁殖行動が全く異なるアカオタテガモ(Oxyura jamaicensis)とコスズガモ(Aythya affinis)でペアと群れをつくり、それぞれを自然環境を模した屋外の鳥小屋に入れた。
ペアではオスとメスが1対1なのに対し、群れではオスの間に競争が生まれるように、8羽のオスと5羽のメスが入れられた。
アカオタテガモはつがいを形成しない。そしてほぼ例外なく、オスが強制的に交尾を行う。一方、コスズガモはつがいをつくる習性があり、オスがほかのメスに交尾を強要することは比較的少ない。
ブレナン氏らの予想通り、群れでライバルのいる鳥小屋に入れられたコスズガモのオスは、ペアにされたオスに比べてペニスを長く発達させた。
一方、アカオタテガモのペニスはそもそも体の長さに匹敵するほど大きい。ブレナン氏はペニスがそれ以上長くなるとは想像できなかった。ある意味、ブレナン氏の予想は的中した。群れのオスのペニスがほかより長くはならなかった。
だがしかし、予想外のことも起きた。驚くべきことに、ある時期までほとんどペニスが発達しなかったものがいたのだ。
そのわけはこうだ。アカオタテガモの群れには順位制が見られた。そして、上位のオス2羽だけが早くからペニスをゆっくりと発達させ、繁殖期の終わりまで維持し続ける。かたや、上位のオスに太刀打ちできない下位のオスたちは別の戦略をとった。
「残りのオスたちは急速にペニスを発達させ、(上位の)オスにひどい目に遭わされる前にこっそり交尾しようとしました」とブレナン氏は話す。
下位のオスたちは交尾を終えると、同じく急速にペニスを繁殖不能な状態に戻す。幸運に恵まれれば、ボスの怒りに触れることなく逃げ切れるというわけだ。
カモのペニス、ライバルがいると長くなると判明 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
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