渡邉恒雄 そして、それよりも何よりも、特攻攻撃がどんどん始まるわけです。
特攻に行くのは、最初は長男は許された。長男はいい、次男はいけ、
というわけだ。それがそのうちに長男も次男もなくて、
志願するものは一歩前へ出ろ。一歩前へ出ると、それはもう明日には死ぬわけだ。
出ないやつは助かるが、あとでボコボコにやられるわけです。
それで、そんなにやられるなら俺も一歩前だ、と出る。
当時ニュース映画で特攻隊出撃の場面を見た。勇んで行くどころか、
皆首を垂れ、うなだれたような悲哀を感じさせる姿としか思えなかった。
田原 そういうことですか。
渡邉 だから、強制ですよ。暴力による強制。
田原 お国のためとか、天皇のために、特攻に出たんじゃない。
渡邉 とんでもない。殆ど暴力による強制です。この間、
僕は政治家たちに話したけど、NHKラジオで特攻隊の番組をやった。
これがよくやったと思う番組でね。兵士は明日、行くぞと。
その前の晩に録音したもので、みんな号泣ですよ。うわーっと泣いて。
死にたくないって。戦時中、よくこんな録音を放送できたと思う。
田原 あ、そんな録音がとってあった。
渡邉 特攻隊の死ぬ前の晩の声。勇んでいって、靖国で会いましょうなんか
信じられているけど、殆ど嘘です。
田原総一朗責任編集『オフレコ!』(アスコム)2005年 Vol.1
http://esashib.com/tuzimoto04g.htm