私はこうして「世界初の公認サイボーグ」になった
頭にアンテナを埋めて「超色覚」を得たニール・ハービソン氏に聞く
義肢から薬剤まで、人間は数千年にわたり、テクノロジーを活用して身体や精神の能力を向上させてきた。それが今、加速している。進歩するテクノロジーを使った「人間拡張」によって、従来とまったく違った方法で世界を体感しようとしている人たちがいるのだ。
34歳のアーティスト、ニール・ハービソン氏もそうした人々のひとりだ。色覚異常を持って生まれた彼は、目に見えるものすべてがグレースケールで、ほかの色をまったく認識することができない。ハービソン氏はこれを障害というより、むしろ財産であるととらえているが、一方で視覚というものをさまざまな面から理解したいとも考えていた。
過去13年の間、ハービソン氏は可視光から不可視光まで、さまざまな波長の光を「聞いて」きた。頭に埋め込んだアンテナのような装置が、光の波長を振動に変換して頭蓋骨に伝え、それを音として認識しているのだ。
この装置を着けた写真をパスポートに使うことが英国政府に認められて以来、ハービソン氏は「世界初の公認サイボーグ」と呼ばれてきた。テクノロジーを活用したこうした能力の拡張は、人間が不確かな未来に順応していくうえで、不可欠な戦略であると彼は言う。
通常を超える感覚をもつ利点について、ハービソン氏に聞いた。
自身がサイボーグであることをどう表現しますか。
「アンテナと体の部位、またアンテナのソフトウエアと私の脳の間には、何の違いもありません。機械と人が合体していることで、私は自分がテクノロジーそのものであると感じます。
1960年に科学者のマンフレッド・クラインズが提唱した「サイボーグ」の定義とは、新たな環境を探検し、そこで生き延びるために、我々は環境ではなく、自分自身を変えなければならないというものでした。現在、我々は実際に自分自身を変えるツールを手にしています。我々は新たな感覚、新たな器官を自らに付け加えることができるのです。 」
頭のアンテナに関して受ける質問の中で、印象に残っているものはありますか。
「特にこれといったものはありませんが、私のアンテナを見た人たちが、それを何であると判断するかは、時とともに変わっていきます。2004年には、このアンテナは読書灯に見えたようで、スイッチは入れられるのかとよく聞かれました。2007年にはハンズフリーの電話、2008年から2009年にはウェアラブルカメラでした。昨年からは、私に向かって「ポケモンGOでしょう!」と言う人たちが出てきました。イタリアの小さな村では、高齢の男性に、これを使ってカプチーノを作るのかと聞かれました。 」
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