第1回
「日本会議」は政権を牛耳る黒幕なのか?
菅野 完/古谷 経衡
■実体は弱小団体だが侮ってはいけない理由
古谷 菅野さんの『日本会議の研究』、大変おもしろく読みました。今日はお話しするのをとても楽しみにしていました。よろしくお願いします。
日本会議(*1)は、僕の中では老人ホームみたいな印象の存在だったんですよ。僕は数年前まで「日本文化チャンネル桜」(*2)に出入りしていましたが、当時そこから見ていると、彼らはネットが使えなくて携帯すら持っておらず、「YouTubeって何?」という人ばかりだった。使うのは、基本はハガキでせいぜいファックスまで。まるで火縄銃で戦っているようなイメージでした。
僕だけでなく、チャンネル桜の中では、みんな(日本会議を)バカにしてましたね。「これからのネット時代はチャンネル桜が切り開く。日本会議は近代化できていない未開の部族だ」、的な印象があった。
ずっとそんなイメージがあったので、最近になって、「日本会議こそ安倍政権を牛耳っている黒幕だ」などと注目されるようになったことには、少し違和感がありました。
菅野さんも、『日本会議の研究』(扶桑社新書)の「むすびにかえて」で、最初は巨大組織というイメージを持って調べていったら、実は小さい団体だったと書いています。そこが、世間が誤解しているところでしょうね。
(中略)
菅野 わかります。僕は1974年生まれなんだけど、少し下の世代は中学時代に『紺碧の艦隊』などの架空戦記を読みまくった人が多いんですよ。それがやがて雑誌『SAPIO』を読み始め、さらに「新しい教科書をつくる会」(*)で運動に目覚めるのが、ネトウヨのエリートコース(笑)。
古谷 まさにそのエリートコースを踏みました(笑)
でも、チャンネル桜に集まった人々と何年かつきあってみて、僕が彼らを過大評価してたと思い知らされました。渡部昇一さん(上智大学名誉教授)や長谷川三千子さん(埼玉大学名誉教授)をはじめ、名の通った論客が顔を揃えているから、まともな集団だと思ってたんですよ。
でも実際にそこで仕事をしてみると、ファクトに基づいて議論するといった、メディアとして最低限の作法も身についていない。要するに「陰謀論」と「トンデモ」の巣窟なんです。偏差値61どころじゃない、言ってしまえば偏差値38だったんですよ。
チャンネル桜の番組を観ている大半の人たちも、何も勉強していないように感じた。たとえば番組常連の西尾幹二さんなどの講演に行くと、「水戸学が云々」といった知的な話の部分ではみんな居眠りしていて、「支那はけしからんですよ!」という話になった途端にガバッと起きて「そうだそうだ!」。口を開けば「支那」「朝鮮」。在特会は「朝鮮人出ていけ!」と言います。彼らは「朝鮮人は出ていってください!」と丁寧語で言っているだけで、本質は何も変わらない。あとはコミンテルン(第3インターナショナル)(*)の陰謀がどうのとか。
全文ソース先
http://www.gentosha.jp/articles/-/7206