新種の寄生バチを発見、宿主を操り頭を食い破る
新たな寄生バチが発見された。その悪魔のような生態から、混沌を司るエジプトの神セトにちなんでEuderus setと学名が付けられた。通称はクリプトキーパー。“棺の番人”という意味だ。
米国南東部に生息するこのハチは、別の寄生バチであるタマバチの仲間Bassettia pallidaが作った「虫こぶ」に卵を産みつける。虫こぶは、寄生バチの幼虫などが木の一部をふくらませて作る突起で、このタマバチはカシの木に虫こぶを作る。
虫こぶに産みつけられた卵が孵化すると、クリプトキーパーの幼虫は自力でタマバチに寄生してその体を乗っ取り、木に穴を開けて外へ出ようとする。
クリプトキーパーがずる賢いのは、宿主が通り抜けるには小さすぎる穴を開けさせることだ。タマバチがみずから開けた穴に引っかかって動けなくなると、クリプトキーパーは内側から宿主を食い破り、その頭から顔を出す。
このハチの名前の由来となったエジプトの邪神セトは、ハイエナやヘビなどの動物を操ることができると考えられていた。さらに、兄オシリスを棺に閉じ込めて殺害し、その遺体を切り刻んだという。
寄生という概念はよく知られている。ヒルやダニなどは、他の生物に寄生する生物の典型だ。
二重寄生というのは、他の寄生者に寄生することをいう。たとえば、幼虫に卵を産みつける寄生バチに対して別の寄生バチが卵を産みつける場合がこれにあたる。クリプトキーパーの例では、宿主を操る寄生虫(カシの木に虫こぶを作るタマバチ)が別の寄生虫(クリプトキーパー)に操られている。「この研究はとても貴重な発見だといえます」。米ハーバード大学で捕食寄生者とその宿主の関係を研究している米国国立科学財団の博士研究員エミリー・マイネケ氏は語る。
全文はこちら http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012700028/
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012700028/ph_thumb.jpg