安全管理上の問題が相次いだ高速増殖炉「もんじゅ」について政府は廃炉にすることを決め、地元の福井県と廃炉の進め方などについて協議を続けることにしています。一方、原子力規制委員会は今後原子炉からの核燃料の取り出しと廃炉の計画の申請を早期に行うよう事業者に求める方針です。
政府は21日原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉もんじゅについて運転を再開するまでには最低8年の準備期間が必要で、運転を続けると5400億円以上の費用がかかるなどとして運転を再開せず廃炉にすることを決めました。
これについて福井県の西川知事はこれに先立って開かれた政府との会合で事業者の日本原子力研究開発機構が廃炉を担うことについて「地元として極めて不安を感じる」などと述べて容認しない考えを示しました。
こうしたことを受けて政府は廃炉の進め方などについて地元との意見交換を継続し、理解を得たい考えを示しました。
一方、原子力規制委員会の田中俊一委員長は会見で「原子力機構以外に廃炉作業を担える組織はないと思うが、任せっぱなしでよいかどうか懸念があるので規制委員会も配慮して取り組まないといけない」と述べました。
規制委員会は今後原子炉からの核燃料の取り出しと廃炉の計画の申請を早期に行うよう原子力機構に求める方針です。政府の方針ではまず5年半かけて原子炉から核燃料を取り出し、その後、通常の原発の目安と同じおよそ25年間で施設の解体などを行い廃炉にすることにしていますが、国内で高速増殖炉の廃炉の経験はなく、より長い期間に及ぶ可能性があります。
規制委員会は廃炉が安全に進むよう規制を強化するため、廃炉作業が妥当かどうかを議論する専門の監視チームの設立や関係する法令の改正などを検討する方針です。
高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉は日本の基本政策としてきた核燃料サイクルの確立がいまだ見通せないことを改めて示すことになり、政策の抜本的な見直しを含めて今後の進め方が問われます。
エネルギー資源に乏しい日本は原子力の利用に乗り出した当初から、原発の運転で出る使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び利用する核燃料サイクルを基本政策としています。プルトニウムを加工した燃料を利用する施設が高速炉で、日本が目指したのは高速炉の中でも使った以上の燃料を生み出す高速増殖炉でした。
当初は昭和60年代に実用化する計画でした。しかしその研究開発を担うもんじゅは試験運転を始めて以降の22年間で稼働実績が250日しかなく、この間の最大の出力も40%と、役割を十分に果たせないまま、廃炉が決まりました。
核燃料サイクルにはプルトニウムを含む燃料を一般の原発で燃やすプルサーマルもありますが、現在行われているのは1基で、16基から18基で行うという本来の目標からはほど遠い状態です。
政府は今回、もんじゅを研究開発の途中で廃炉にする一方、フランスとの開発協力などを通じて次のステップにあたる高速炉の実証炉の開発を進めるとしていますが、半世紀以上にわたって目指してきた核燃料サイクルの確立はいまだ見通せない状況で、政策の抜本的な見直しを含めて今後の進め方が問われます。
そそソース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161222/k10010815801000.html