2004年にタラバガニと偽って販売されていたことが発覚したことで、イメージが低下した「アブラガニ」の復権を目指す動きが道内で広がっている。
札幌市の水産仲卸会社とスーパーは20日に札幌市で試食会を開催。水揚げの多い網走市は今年から、ふるさと納税の返礼品に加えた。タラバガニが枯渇する今、関係者はアブラガニの市場拡大と汚名返上の好機とみている。
アブラガニはヤドカリの仲間で、タラバガニの近縁種になる。市場価格はタラバガニの3~4割安い。札幌市の甲殻類専門商社「札幌ヤマグチ」が、民間の研究機関に食味評価を依頼したところ、うまみ成分量には差異はなかったという。
元々、お得にカニを楽しむための存在だったが、04年に公正取引委員会が全国各地で偽装を次々と指摘したため、「タラバガニの偽物」というイメージが定着。札幌中央卸売市場の関係者によると、発覚以降、取り扱いをやめる小売店が増えたという。
偽装の背景には、ロシアでの資源枯渇でタラバガニの輸入量が減ったことなどに加え、安価で見た目もそっくりだったことがある。一方で、同市場の関係者によると、偽装が発覚するまで、タラバガニとして輸入されたものの大半がアブラガニで、水産業界も長く厳密に区別していなかった。だが、03年に水産庁が明確に区別するよう指導したことなどもあり、同市場も04年から分けて統計をとりはじめた。
統計で際立つのが、タラバガニの取扱量の減少だ。冷凍でみると、15年は04年のほぼ5分の1で、取引価格も約3倍に跳ね上がった。資源量の減少に加え、国際的な取引価格の上昇があるという。また、14年からはロシアの密漁、密輸防止が強化されたこともあり、近年はさらに高値になっている。アブラガニも連動するように価格が上がっているが、それでもタラバガニの3分の2程度にとどまっている。
試食会を企画した青池水産は「タラバガニの高騰が続くと、食べられるのが富裕層だけになり、カニを食べる文化が衰退する。今はアブラガニを見直す好機。タラバほど資源が枯渇しておらず、多くの人においしさを知ってもらいたい」と話す。試食会ではゆでたアブラガニ400キロ分を用意。ホクレンショップ49条店で午前10時から始める。
また、国内水揚げの9割以上を誇る網走市では、今年1月からふるさと納税の返礼品に加えた。4万円以上の寄付者が対象で、冷凍の1・5キロ詰めを選べる。10月までに48人から申し込みがあった。市の担当者は「今後もタラバガニと遜色のないカニとして広めていきたい」としている。
札幌ヤマグチでは今春から、取引先にアブラガニを積極的に売り込んでいる。10月までの売り上げは前年より若干多い程度だったが、11月からは約2倍に伸びているという。同社は「タラバガニの高騰が背景にあると思うが、アブラガニがおいしいカニであることを強調したい」と話している。
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