米警察が「爆殺ロボット」捜査投入 容疑者殺害 全米で波紋広がる
【ニューヨーク=上塚真由】捜査現場への「ロボット」投入の是非をめぐる論議が米国で高まっている。先月は、警察官を銃撃した容疑者を地元警察は軍事用に開発されたロボットを使って爆殺した。危険な捜査現場で警察官を危険にさらさないメリットが指摘される一方で、警察の「軍事化」に拍車をかけるとの指摘や、人権団体などから懸念の声が上がっている。
米南部テキサス州ダラスで7月7日、5人の警察官が銃撃された事件で、ダラス市警は、軍用プラスチック爆薬を取り付けたロボットを、遠隔操作でマイカ・ジョンソン容疑者(25)のそばまで移動させて爆発させ、殺害した。
使われたのは米防衛機器大手、ノースロップ・グラマン社が開発した爆弾処理用ロボット。カメラが搭載され、延伸アームで約27キロの物体を動かせる。警察が容疑者殺害のために投入したのは初めてとされる。
これまでは立てこもり事件などでロボットが重用され、危険物を調べたり、搭載カメラで容疑者と交渉したりするケースが一般的だったが、ダラス市警のブラウン本部長は「交渉が決裂し、ロボットを使用しないと警察官を危険にさらす恐れがあった」と説明した。
米国の捜査現場での軍事用ロボットの使用拡大は、米軍が余剰装備を警察などに売却していることが要因の一つとされる。米バード大の調査によると、米軍がイラクやアフガニスタンなどの戦地で使用したロボットを捜査機関に売却した回数は2003年は3回だったが、今年は5月末までで201回に上る。
一方、捜査機関による軍事用ロボットの使用について、人権団体はたびたび懸念を示している。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)などが14年に発表した報告書は、自律的なロボットについて、「警察活動のあらゆる状況に対処するようプログラムされていない可能性がある」と指摘。ダラスの事件の直前の6月にも、HRWの研究員は「過大な損害や、民間人が誤って標的になることにつながりかねない」と警告していた。
自律的なロボットの開発・使用の是非は国際的な議題となっている。国連が4月にジュネーブで開いた、特定通常兵器使用禁止制限条約・自律型致死兵器システムに関する専門家会議では、人権上の問題点を危惧する意見が多く聞かれた。
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