年金5兆円損失でも…「国家公務員共済」安全運転で運用益
やっぱり、国家公務員は損をしてなかった─―。
株式での運用比率を引き上げたために、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用実績は5.3兆円のマイナスだったと先週、発表されたばかりだが、
なんと、国家公務員の年金を支える「国家公務員共済」は安全運用でちゃっかり運用益を出していたことが分かった。
国家公務員共済は、15年10月以降、制度が変わったため、通期の運用実績は残されていないが、15年度の下半期は248億円のプラスだった。
同じ期間、GPIFが約660億円のマイナスだったのとは大違いだ。
それもそのはず、国家公務員共済はGPIFに比べ、ずっと安全な運用を行っているからだ。
昨年2月、運用比率をGPIFと同じにする方針が決定されたが、ある“カラクリ”を潜ませ、リスクを回避しているのだ。厚労省関係者はこう言う。
「国家公務員共済も、GPIFも、ポートフォリオを国内債券35%、外国債券15%、国内外株式50%にすることになっています。
でも、国家公務員共済には、大きな『乖離許容幅』を持たせているのです。国内債券での運用比率の中央値『35%』に、プラスマイナス30%もの許容幅があり、
65%まで国内債券での運用比率を高めることができる。一方、GPIFの国内債券での運用比率の許容幅はプラスマイナス10%だから、45%までしか高めることができません」
実際、国家公務員共済の国内債券での運用比率は、15年3月末時点で62%。国内外株式での運用比率はたった31%だった。
国内債券約37%で、国内外株式が約44%だったGPIFに比べると、差は歴然。国家公務員共済は安全な国内債券で運用し、
GPIFは強制的にリスクを取らされているようなものだ。経済評論家の荻原博子氏はこう言う。
「国家公務員の年金はもっとリスクを取るべきとは言いませんが、この運用比率の格差は大きい。
『株価の下支えはGPIFでよろしく』と言っているようにも見えます。今さらGPIFの国内外株式での運用比率を下げることはできません。
GPIFが『株式を売る』と言った途端、マーケットは大暴落してしまうからです。損失の責任を、一体誰が取るのでしょうか」
いつも損を見るのは庶民ばかりだ。
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