アダルトビデオの撮影と知りながら20代の女性を撮影現場に派遣したとして東京のプロダクション会社の元社長ら3人が労働者派遣法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。アダルトビデオの出演を巡ってはここ数年特に、悪質な勧誘や契約が問題となっていて、警視庁は会社の詳しい実態を調べています。
逮捕されたのは、東京・渋谷区にある芸能プロダクション「マークスジャパン」の元社長の村山典秀容疑者(49)ら3人です。
警視庁の調べによりますと3人は、3年前の9月から10月にかけて、アダルトビデオの撮影と知りながらプロダクションに所属する20代の女性を撮影現場に派遣したとして労働者派遣法違反の疑いが持たれています。
3人は「モデルの仕事だ」として所属契約をさせたのち、アダルトビデオへの出演を指示し、女性が「出演したくない」と拒否すると「多額の違約金がかかる。親に請求書を送る」などと出演を承諾するよう執ように迫っていたということです。
警視庁によりますと「マークスジャパン」は12年前に設立され、関連会社を含めるとこれまでに所属していた女性はおよそ4500人と業界では最大手のプロダクションだということです。
アダルトビデオの出演を巡っては、ここ数年特に悪質な勧誘や契約が問題となっていて、警視庁は、同様の被害がなかったか会社の詳しい実態を調べています。警視庁は3人の認否を明らかにしていません。
強制捜査は異例
過去5年間、警視庁が同様の事案を摘発した例はなく、強制捜査を行うのは異例です。
警視庁によりますと、労働者派遣法では「公衆道徳上有害な業務」に派遣することは処罰の対象になるとされていますが、適用するのは容易ではないということです。女性がアダルトビデオの出演に承諾する契約を交わしていたり「家族や他人に知られたくない」と被害を訴えずに黙っていたりしていて、警察に届け出るケースは少数だからです。
今回の女性の場合も「制作するDVDが成人向けの場合でも出演する」と記載された契約書がプロダクションと女性との間で交わされ書類上は女性が承諾したようになっていました。しかし、警視庁が聞き取りをしたところ、被害を訴えた女性は契約の際に詳しい説明がなかったうえ、契約書のコピーも渡されず、アダルトビデオの出演を承諾する認識がなかったと説明したことなどから、悪質なケースだと判断し強制捜査に至ったということです。
AV出演被害の相談相次ぐ
アダルトビデオの出演を巡っては、ここ数年で女性からの被害の相談が急増しています。
支援団体によりますと、相談件数は平成24年度以降、年々増えていてこれまでに120件を超える相談が寄せられているということです。
主な内容としては、勧誘を受けたり契約を結んだりした際、アダルトビデオの撮影とは知らされていなかったというものや、撮影を拒むと違約金を請求されたといったものが目立っているということです。
こうしたなか、支援団体はモデルのスカウトなどを装った勧誘を規制したり、本人の意思に反する契約を解除したりできるよう法律を整備すべきだと指摘しています。
一方、女性に対しては、安易にスカウトについていったり、契約書にサインしたりしないこと、さらにトラブルに巻き込まれた場合はすぐに支援団体などに相談するよう呼びかけています。
ソース
AV撮影と知りながら派遣か 元社長ら逮捕 | NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160613/k10010554561000.html