そうした大きなリスクがあるにもかかわらず、JR東海は十分な地質調査を行なっていない? そんなことがあり得るのだろうか。
JR東海が品川から名古屋までのリニアルートを公開したのは13年9月のこと。それを記載した報告書「環境影響評価準備書」(以下、準備書)には、東濃地区について「計画路線はウラン鉱床を回避している」と、しっかり記載されているが…。
リニア建設問題に取り組む愛知県の市民団体「春日井リニアを問う会」の代表、川本正彦さんはこう指摘する。
「JR東海はこれまでに東濃地区で1本しかボーリング調査を行なっていません」
たったの1本だけ!?
「それにもかかわらず、『ウラン鉱床を回避している』と明言する根拠は、25年以上前に『動力炉・核燃料開発事業団(動燃。現・独立行政法人日本原子力研究開発機構)』(以下、機構)が東濃でウラン探査のため約1400本のボーリング調査を行なって出した文献『日本のウラン資源』だけです。もっとも、その1400本の調査はリニアルートをほとんどカバーしていないのですが」
その点について、実は記者も12年夏に、機構の東濃地科学センター(岐阜県瑞浪<みずなみ>市)地域交流課に尋ねたことがある。その際のやりとりは次の通り。
―過去に1400本のボーリングを行なっています。これで東濃地区全体の地層がわかるのでしょうか?
「旧・動燃だけではなく、私たちも数十本のボーリングをしたので、あらかたの地層はわかります」
―まだボーリングを行なっていない地域もありますが?
「おおよそこうだろうとの予測はできます。もちろん、地下がどんな地層かは実際には掘ってみなければわかりませんが」
(了)