http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48543?page=2
旭化成による物件調査は、10月23日に国土交通大臣が指示したうえ、11月13日までに調査結果を報告するように求めたものである。
調査方法は、旭化成と元請け会社がともに各物件の施工データを確認し、データ不正の有無を調べるというもの。調査対象のマンションに対しては、売り主が管理組合に調査対象であることを連絡するようになっていた。
「それが管理会社を通じて、報告期限になってわれわれに知らせてきたのだから、なおさら不信感が強まりました。それできちんとした調査なのか不安になったので、松尾建設に住民向けの説明会などを要望しました。また、11月24日には国交省にも電話で相談し、施工会社にちゃんと説明をさせるように求めました。
しかし、事態がなかなか進展しないので、12月7日に改めて国交省へ相談をしたのですが、この対応がまたひどかった。
国交省の担当者は、『そんなに心配なら、管理組合で予算を使って杭を調査してみたらいいじゃないですか』『1本25万で調べられます。それで1~2本調査したら安心できるんじゃないですか』と、言ったのです」(前出・管理組合の一人)
不信と怒りを募らせるばかりの住民たちは、ついに自分たちで動き出す決意をする。昨年12月末にようやく松尾建設が出してきた杭の工事施工報告書をもとに、第三者の調査機関に改めてデータ流用についての調査を依頼したのである。
今年1月22日、管理組合に届いた調査結果は驚くべきものだった。それは、「根固め液注入量に不自然な同一数値がみられ、偽装が疑われる」というもの。根固め液とは、建物の基礎となる杭を地中に固定するためのものだが、その注入量でデータ不正があったというのだ。
住民側はこの結果をもとに、住民説明会へ弁護士などを同席させたいと売り主を通じて松尾建設に通告。すると突然、松尾建設の担当者はデータ不正があったと認めて、住民に謝罪をした——。
松尾建設で調査担当だった東京支店副支店長は、本誌の取材に「流用があった」ことを認めたうえで、これまでの経緯を次のように語った。
「最初に旭化成建材から調査依頼の書類が届いたのは昨年10月25日か26日。11月13日までに国交省へ結果を報告するため、11月9日までに調べてほしいという内容でした。調べるデータは旭化成建材に提供してもらい、2~3日かけて調べて流用なしと旭化成建材に報告しました。しかし、住民説明会を前に今年2月に改めて資料を見直すと、データ流用があったことに気が付きました」