郭会長は「質問の意図が分らない」と語り、会見場に緊張感が漂った。すると空気を読んだのか一転して「契約書を交わしているので、支払いの減額はない」と発言。前列に陣取った鴻海スタッフ(?)を中心に拍手が巻き起こり、郭会長は自身のペースを取り戻した。
■意味深な発言
意味深な発言が飛び出たのは、日本のアナリストが「(次世代ディスプレーと言われる)有機ELは鴻海も日本勢も遅れている。先行する韓国勢にどう追いつくのか」と質問したときだ。
郭会長は「あえて会社名は挙げずに話す。報道で有機ELが出ているが、8割方は間違った情報が広まっていると思う」。米アップルがアイフォーンに有機EL搭載を検討していると報じられているとにおわせながらも、はたまた韓国勢が有機ELの生産拡大に動いていることかを明確にせずに謎かけをしたといえる。
そのまま「有機ELの将来を考えると、私は(シャープの独自液晶の)IGZO(イグゾー)のほうが優れていると思っている。某会社のわなにはまらないようにお願いしたい。有機ELの開発は時間がかかり、ビジネスは手遅れではいけない」と述べ、2千億円の投資を盛り込んだ支援策に反して、液晶を重視する姿勢でけむに巻いた。
従業員のリストラについては「鴻海では個人の業績をみて毎年、3~5%辞めてもらっている。日本では全員(の雇用を)維持できるようにしたい。適職でなかった人にももう一度チャンスを与え、残っていただきたい」と説明した。
また、シャープ側の理由で出資が実現しなかった場合に、鴻海が液晶や有機ELなどのディスプレー事業を「公正な価格で購入できる」とした条項については「万が一のため」と述べ、「実行の確率では(99%のコンマの後に)9が並び続けるほどだ」と破談を否定した。
記者会見で従業員のリストラや破談について言質を取られずに終え、不機嫌になったとはいえ、明言したのは出資額の減額がこれ以上はないというくらいだ。それにしても契約文書の条項を鴻海に有利に書き替えたいま、口約束に拘束力はないに等しい。
シャープの再建がどうなるのか疑問が解消しないまま押し切られた記者会見だった。
http://www.sankei.com/west/news/160412/wst1604120002-n3.html