水俣病公式確認６０年となる５月１日に向け、展示の全面刷新を終えた熊本県水俣市立水俣病資料館は４月１日、オープンする。来館者の半数以上を占める小中学生に分かりやすいよう写真を多用した。一方、患者や被害者からは「（展示資料の文言に）加害者としての行政の謝罪がない」「患者の実名が（刷新後に）ほぼ消えてしまった」など、展示内容の見直しを求める意見も出ている。
資料館は３１日、関係者向けに内覧会を開いた。工場の有毒廃水を垂れ流した「百間排水口」のレプリカから先が展示室。「企業と行政の責任」のコーナーには、２００４年の水俣病関西訴訟の最高裁判決で、加害責任が確定した行政の謝罪やおわびの文言はない。水俣病被害市民の会の坂本龍虹（りゅうこう）さん（８１）は「謝罪なくして教訓は伝わらない。行政は６０年で幕引きを図ろうとしている」と指摘した。
認定申請を４度棄却され１０年がかりで患者認定された緒方正実さん（５８）は「被害者の闘いと認定・補償制度」のコーナーで足を止めた。刷新前は自身の歩みも展示されていたが、その展示はなくなった。「私の闘いは個別案件という受け止めだろう。被害の歴史を正しく伝えてほしい」。展示物から患者の実名がほぼなくなったことにも「実名でないと、子どもたちに真実だと訴える力が弱い」と資料館に要望した。
島田竜守館長は「意見をまとめて柔軟に変えたい」と話した。
ソース
水俣病資料館が全面刷新 展示内容に見直し求める声も - 西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/235073