国が初めて組み体操の安全確保に関する通知を出すに当たって、二〇一四年度に全国で起きた
約八千六百件の組み体操事故の内訳を調べたところ、「倒立」や「肩車」、肩車の状態から上段の
人が下段の人のひざの上に移動する「サボテン」など、二人組で行う技でもけがが多いことが分かった。
スポーツ庁が、日本スポーツ振興センター(JSC)のデータを基に分析した。一九六九年度以降に
発生した死亡事故九件のうち二件は高さ約一メートルからの落下で起きており、専門家は子どもの
体力が低下する中で無理な技を強制することは危険だと指摘する。
一四年度の事故で最も多かったのは肩の上に立つ「タワー」(14・4%)だが、僅差で続いたのが
「倒立」(13・6%)で、小学校から高校まで年間に計約三百人が骨折していた。肩車、サボテンの
事故も6~7%あった。大掛かりではない技でもけがが目立つ背景を、林承弘医師は「子どもの足腰
の筋肉が弱っている」と話す。二〇一〇~一三年に幼稚園から中学まで約千三百人を独自調査した
ところ約15%は片足立ちや、しゃがみ込みができず、約8%は手を真っすぐ上げられなかった。「体が
硬く、とっさの時に身を守るための行動を取れない子どもが多い。倒立で事故が多いのも当然だ」という。
「最近の子どもは地面にかかとをつけたまましゃがめず、後ろに転んでしまう。和式トイレが消え、しゃがむ
習慣がなくなった影響ではないか」。ライフスタイルの変化が子どもの体力低下の一因だと推測するのは、
体育が専門の東京都大田区立雪谷中学校の新宮領毅校長だ。区内では数年前、サボテンの試技中
に上段から落下した子どもが前歯を折る事故が発生。新宮領校長は「サボテンは今の子どもにさせるのは
難しいと思っていたが、国の分析で危険性が裏付けられた」と話す。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/images/PK2016032502100182_size0.jpg
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