「日本死ね」と言われても「日本はもう死んでいる」
2016年03月19日 01:30 宇佐美 典也(元 経産省)
全3回にわたるロングインタビューなのですが、大筋としては
「もう日本の社会保障制度は詰んでるし、厚生労働省レベルでは立て直しようもない。だから厚生労働省だけに文句言うんじゃなくて、民間の投資を呼び込む投資減税とか、地方自治体による社会福祉関係者の生活コストを削減する政策とか、そういう他の切り口も含めて、知恵を絞っていかないと現場は崩壊していく。」
という話を中心にさせていただきました。
財政予測
(経済財政諮問会議資料より)
http://livedoor.blogimg.jp/usaminoriya34/imgs/a/4/a4f14a9b-s.png
この辺私が言うまでもないのですが日本政府の試算では「例え消費増税をしたとしても劇的(2%程度)な成長率の底上げがなければ日本の財政再建はなされない」というデータが出ております。
ただこれまでこうした政府の経済成長の底上げ予測があたったことはないですし、その上労働人口が減っていく可能性すらあるという人口構成ではなおさら「経済再生」というのは困難でしょう。ベースラインを維持するのでやっとというのが本当のところだと思います。
それでもこうした資料が出てくるのは「問題の先送り」という日本社会が長らく抱えた病でして、定常的な財政赤字構造で1000兆円を超えるまで膨らんだ借金をテクニックを駆使してさらに膨らましながら社会保障財政を回すという苦しい構造は今後とも続き、最終的には破裂することになるのでしょう。
日本にはギリシャと違って経済の基盤がありますから、だからといってハイパーインフレが起きるとか、経済の大混乱が起きるとか、そういうことではなく、粛々と財政赤字の主因である社会保障の切り捨てが行われるというのが日本の将来的な財政破綻の姿なのではなかろうかと思います。
世間では保育所の整備が遅れていることを持って「日本死ね」と主張する言葉がもてはやされているようですが、残念ながらこの文脈において「日本」という言葉が「日本政府」を指すならば、「日本の社会保障はもうすでに死んでいる」というのが現状なのでしょう。
ドイツかなんかの諺に「死体の腐臭を隠すほど難しい仕事はない」という言葉があるということを聞いたことがあるのですが、今日本の厚生労働省の官僚がしている仕事というのは大変残念ながらその種の仕事であることは間違いありません。その意味では彼らは大変優秀だと思いますし、また実際のところハードランディングを避けるという意味でも、厳しい現状に向き合いたくない国民の声に政治的に応えるという意味でも、「先送り」という非常に重要な仕事をしていると思います。
そんなわけで(技術的には可能かもしれないが政治的には)立て直しようもない日本の社会保障制度に、保育所なり保育士の待遇問題の抜本的な解決を求めたところで政治的には手がないのが現状なのだと思います。
(絶対にブチ切れない自信のある賢人は以下ソースから全文をどうぞ)
http://agora-web.jp/archives/2018213.html