福島第一原発取材――東電よ、まだ見せられるものがある
添田孝史 (科学ジャーナリスト)
2016年3月13日 ポリタス
(一部抜粋)
昨年6月、東京地裁で開かれた東電株主代表訴訟で、東電側のある文書の存在が明らかになった。それは2008年9月10日に福島第一原発の第二応接室で開かれた会議の議事メモだ。吉田所長の前任である小森明生所長ら福島第一原発から18人、東京本店から吉田氏の部下らが出席していた。
議事概要の5項目目には、「津波に対する検討状況(機微情報のため資料は回収、議事メモには記載しない)」と記されていた。会議後回収された資料も東京地裁に提出されたが、そこには以下のような記述があった。
ただし、地震および津波に関する学識経験者のこれまでの見解および推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると、現状より大きな津波高を考慮せざるをえないと想定され、津波対策は不可避。
上記引用部の「推本」とは、地震に関する調査研究を政府として一元的に推進する「地震本部」のことを指す。2008年時点で東電が「津波対策は不可避」と考えていたことを示す物証であり、これから開かれる刑事裁判でも重要な証拠の一つになると見られている。これと同じような、事故前の意思決定過程の解明に欠かせない資料は、福島第一原発の事務本館にはまだ残されているだろう。免震重要棟と隣接する同館の復旧も進んでおり、一部は再利用され始めていた。汚染を理由に、ここにしか残っていない文書が焼却処分されてしまわないようにしてもらいたい。
(全文は以下ソース)
http://politas.jp/features/9/article/482