東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から五年を経て、電力需給を取り巻く環境は
大きく変わった。原発の危険性が再認識され、全国の原発は次々と停止。震災後は電力の供給が
厳しくなる時期もあったが、利用者の節電意識の高まりや発電所の増強で、最近二年間は原発の
稼働がなくても余力を確保できている。
東日本大震災の津波で福島の原発を含め、沿岸部の発電所が被災。東電管内では電力不足
が叫ばれ、五年前には計画停電が実施された。電力不足による突然の大停電は回避した。
問題は電力の利用が最大となる夏場。供給力が足りない中で、企業や家庭は徹底した節電に
迫られた。その結果、省エネ生活が定着し、震災前より夏の需要は大きく減った。原発を持つ
大手電力九社の二〇一五年夏の最大需要を合計すると、東日本大震災前の一〇年夏と
比べて13・5%減少した。
発電に占める原発の依存度が五割近くあった関西電力でさえ、火力発電の増強や中部電力
などから電力の融通を受け、原発稼働ゼロで夏場を乗り切った。五年間の対策が進み、全国の
需要に対する供給余力は一〇年の8・5%から一五年に11・1%に増え、十分確保された。
電力業界が「安定供給のために原発は必要」(電気事業連合会の八木誠会長)と繰り返して
いる主張は年々、説得力を失いつつある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201603/CK2016031102000120.html