http://www.sankei.com/premium/news/160303/prm1603030002-n2.html
「国民年金を40年払い続けても、老後に受け取る年金は満額月6万数千円。いつ生活保護になるかわからない」。そういう社会の現実があるにもかかわらず、「生活保護は恥だと思われている。生活保護にまつわる誤解を解きたいと思った」とふり返る。
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さいきさんの視線は、生活保護受給家庭で育つ子供たちにも向かう。取材を通じ、親の貧困が子供の生活や将来に大きな影響を及ぼしている例を見聞きしてきた。
27年7月に『神様の背中~貧困の中の子どもたち~』(同・900円+税)として出版。現在、18歳以下の6人に1人が相対的貧困にあるとされ、地域の平均的な生活水準に比べ、所得が著しく低い…。同書は、そんな過酷な環境で育つ子供たちが生まれてきた意味と、将来への希望を見い出せなくなる不条理を描く。
中でも胸を突くのが、精神疾患のある母親のもとで愛情をかけられずに育ちながらも、成績優秀な中学3年生が普通高校への進学をあきらめるシーンだ。
〈「大学出て希望する仕事に就けたとしても、オレら生活保護家庭の子は『親を保護から抜けさせるために一生養え』って、言われるんだ」〉
うつろな表情で語る中学生。「貧困家庭に生まれたのはその子の責任ではない。貧困が恐ろしいのは心までを壊すこと」と、さえきさんは言う。家庭の問題は家族で解決すべきといういまだ根強い風潮から、親も子供も外部に相談したり助けを求めたりすることはまれだ。それが、子供の貧困を見えにくくしている。
「貧困の連鎖を断ち切るために、子供たちのシグナルに気づいてほしい」。作品に込められたメッセージは明確だ。(村島有紀)
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