組み体操は安全性か一体感か議論 全国の負傷事故受け福井県も対策 2016年2月28日
ただ、日本スポーツ振興センター(東京)によると、組み体操 (体操)が原因で医療機関を受診した小中高生が医療費を受給した件数は2011年度から4年連続で8千件を突破している。
大阪市は今月、自治体として全国で初めて「ピラミッド」「タワー」を16年度から禁止することを決定。
千葉県流山市の全市立小中学校は 16年度から組み体操を全面廃止する。
(中略)一方で、現場からは組み体操の効果を評価する声も聞かれる。
大野市教委の担当者は「組み体操は、集団内での協力意識や、大きな目標に挑戦する態度を育む上でも一定の意義がある。ほかの演目では代えがたい」という。
敦賀市内のある校長も「安全確保は当然で、国が指示するような話ではない。現場の判断に任せるべきだ」 と話している。
組み体操事故に詳しい名古屋大大学院の内田良准教授(40)= 福井市出身=が同市内で講演し、「『一体感』や『感動』を優先して組み体操を巨大化させていくべきではない」と訴えた。
内田准教授の専門は教育社会学。学校での柔道や組み体操事故について問題提起している。
講演では「ピラミッドで『しんどくても支えろ』というのは日本的な美談で、現場は教育的意義があると言うが、『教育』という言葉が現実の危険を見えにくくしている」と指摘した。
同准教授によると、小学校の体育活動(2012年度)では、跳び箱、バスケットボールに次いで、組み体操の事故が多い。
頭や首、腰など体の中心部分の深刻なけがが多いのが特徴で、ピラミッドは3段まで、タワーは禁止すべきだとの考えだ。
「『危険だからと言ってやめたら何もできない』と言われるが、リスクの程度に応じて優先順位を付けながら安全策を講じなければ ならない」と強調。
ただ国や教委がトップダウンで一律に規制するのは望ましくないとし「子どもの命を預かる学校が自主的に動くこ とが大切」と述べた。
http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/news0/index_other.php?page=article&storyid=90362&storytopic=1
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スポーツ庁の調査では、小中高の組み体操事故は年8000件超で推移し、2014年度は8596件発生。
約7割の6289件が小学校で、種目別では4番目、うち約23%が骨折事案だった。
最多の跳び箱(約1万4700件)や2位のバスケットボールと比べると半分以下で、骨折割合も10ポイント以上低いが、危険な部位を負傷しやすい傾向がある。
頭部のけがは跳び箱・バスケの約3倍の件数で、首や腰など体幹部の割合も約22%と、跳び箱 (13%)などより高かった。
全学年が通年行う跳び箱などと違い、組み体操は高学年で運動会前の短期間に限られることから、同庁担当者は「数字以上に深刻だ。『けがや危険はつきもの』では済まない」と話す。(2016/02/28-14:17)
http://www.jiji.com/jc/ci?g=soc&k=2016022800061