「汚いヤツだ」「ウソつきだ」。米大統領選の共和党候補6人による13日の討論会は、候補者同士の中傷が目立ち、政策論争は深まらなかった。次の勝負の地、南部サウスカロライナ州で開かれた通算9回目の討論会が、子どものけんかのような言葉の応酬になり、身内からも批判が出ている。
今月1日のアイオワ州党員集会、9日のニューハンプシャー州予備選を経て、代議員獲得数で首位に立つ実業家トランプ氏(69)。13日、サウスカロライナ州の討論会では、トランプ氏を批判する候補者が多かった。
トランプ氏が不法移民を「強姦(ごうかん)犯」と決めつけた発言を念頭に、まずブッシュ元フロリダ州知事(63)が「移民たちは家族に(よい暮らしを)提供したいのだ。全員が強姦犯なわけではない。皆さん、誰の発言か、わかりますね」と言うと、トランプ氏は「彼は不法移民に弱すぎる。笑えるほどだ」と反発した。
ブッシュ氏はさらに、トランプ氏が容姿を理由に女性をからかったり、身体障害者のマネをしたりしたことについて、「本当の弱さとは、女性を見くびり障害者を侮辱することだ」と再び攻撃。すると、トランプ氏は突然「2日前、彼(ブッシュ氏)はパンツを下ろして皆にお尻を見せると言ったんだ」と発言。両者の間で言った言わないの応酬になると、司会者が「お尻発言の真偽は後回し」とストップをかけた。
壇上で聞いていたケーシック・オハイオ州知事(63)が「ほどほどにしないと、(民主党の)ヒラリー・クリントン氏を利するだけだ」と嘆くと、会場から拍手と歓声が沸き起こった。
しかし、10分後に非難合戦が再発。代議員獲得数で2位の上院議員クルーズ氏(45)が、トランプ氏がかつて妊娠中絶を認めたとして「彼はリベラルだ」と指摘すると、トランプ氏は「一番のウソつきだ。汚いヤツだ。(上院議員の)同僚が一人も彼を支持しない理由がわかった」とののしった。
終了後、共和党系の評論家からも「正気とは思えない。共和党は自らを破壊している。誰のせいにもできない。とがめられるべきは彼ら自身だ」(フランク・ランツ氏)などの声が上がった。同州では20日に第3戦となる予備選があり、選挙戦が激しくなっている。(ニューヨーク=金成隆一)
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