――そこを直視すべきだと主張したあなたの著書は、激しい反発を呼びましたね。
「本が出て多くのテレビ番組に呼ばれたが、侮辱されるばかり。『君は本当のフランス人ではない』とさえ言われました。そこにあったのは反知性主義です」
「今、テレビやラジオでは『イスラムが問題なのは自明』などという連中が幅をきかせています。彼らはイスラム嫌いを政教分離原則などと言い換える。右翼の価値観がフランスの価値観になってしまったみたいです」
――昨年1月のテロ直後に数百万のフランス人がデモに繰り出し、抵抗の決意表明として内外で称賛されました。しかし、あなたはそこにイスラム系市民への排他的な空気を感じ取り、仏社会の病理を読み解きました。
「デモに繰り出した人の割合が高かったのは、パリ周辺よりもむしろかつてカトリックの影響が強く、今はその信仰が衰退している地方。また階層でいえばもっぱら中間層。それは第2次大戦中のビシー対独協力政権を支持した地域、階層でもある。そう指摘して非難の的になりました」
「リベラルな価値の表明といいますが、実際はイスラムの預言者ムハンマドを『コケにすべし』と呼びかけるデモでもありました」