「虹の雲」が英国上空に出現、オゾン層を破壊
「ハリケーンの後には虹が出る」と米国のミュージシャン、ケイティ・ペリーはヒット曲「ファイアーワーク(花火)」で歌っている。この歌そっくりの光景が、2日夜、英国スコットランドからイングランド北部の上空に現れた。
ハリケーンの規模にはならなかったものの、「ストーム・ヘンリー」は風速97キロ/時の強風を伴って英国北部を襲い、数千人が洪水や停電に見舞われた。だが、吹き込んだ寒気の影響はそれだけではなく、美しい真珠母雲(しんじゅぼぐも)ももたらした(真珠母雲の名は、真珠母貝に似ていることに由来する)。
光揺らめくこの現象は、イングランド北部にあるノーサンバーランド、ウィットリーベイ付近で撮影された。ふつう、こうした現象が現れるのは極地で、この辺りで見られることはめったにない。
別名、極成層圏雲(厳密さにはかけるが、彩雲)とも呼ばれる真珠母雲は、通常、高緯度地方で気温がきわめて低いときにしかできない。この雲が見られるのは、成層圏の強いジェット気流に運ばれてきた小さな氷の結晶が夕暮れの弱くなってきた光が照らしたときだ(参考写真)。
「こうした雲は、おもしろいだけでは済まされません」。オーストラリア南極局の大気科学者、アンドルー・クレコチュック氏は以前、ナショナル ジオグラフィックに語っている。「大気の状態が極端になり、化学変化が促され、生命維持に欠かせない成層圏のオゾン層が破壊されたことを示しているのです」
特に、この雲の表層は、オゾン分子を破壊する化学反応を起こしたり、極地にオゾンホールを発生させたりする可能性がある。
とはいえ、この雲がオゾン層破壊の最大の脅威となるわけではない。最大の脅威はクロロフルオロカーボンや代替フロン、フロン、ハロンなどの人工的な化学物質で、その大半は国際協定のおかげで劇的に削減された。その結果、ここ数十年で、オゾン層に穴が開く危険性は下がり、オゾン層の回復は進むと見られている。
そーす http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/020500047/
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