これもアメリカの要求と森永さん。すでにアメリカ化が顕著なのが国家戦略特区だ。指定地の神奈川県と大阪府で今年から外国人メイドが雇えるようになる。
「住み込みで働いて子育てを手伝ってくれますが、家のなかにメイドの部屋が必要。給料も年に100万円ぐらいは支払わなければなりません。そんなことができるのは、アメリカでも高給取りのエリートだけ。彼らは自分で子育てをしません。メイドが育てる。そのための仕組みを日本にも取り入れようとしています」
一方で安倍政権は、TPPにともない農家や中小企業の投資、海外進出を猛プッシュ。実現できれば79・5万人の雇用が生まれるとそろばんをはじく。
だが、TPPと雇用をめぐる問題に詳しい弁護士の杉島幸生さんは、次のような懸念がぬぐえないという。
「2013年に農水省が出した試算では、TPPにより北海道の農業関係者だけで17万人の失業者が出ると言っていました。今回の交渉結果を見ても農村への影響は大きいでしょう。
農業地域で失業者が出るとなると、どこで新たな職を得るのか。代替の産業が突然生まれるわけがないので都会へ流れてくるでしょう。離農者が都会に流れて来たときに結局、派遣などの不安定雇用になって、都会の労働者と足の引っ張り合いにならざるをえないのではないか」
ほかにも不安材料はある。韓国を例に森永さんが警告する。
「1997年に金融危機に巻き込まれた韓国は国際通貨基金の管理下に置かれて、経済構造改革をやったんです。それによりサムスンやヒュンダイといった大企業がグローバルに活躍するようになり、日本のエリートよりはるかに巨額の給料をもらえるようになったんですが、中小企業は片っ端から淘汰されました。アメリカ化して、とてつもない格差が広がった」
このような事態がTPP発効後、日本でも起きるだろうと指摘。
「生き残れるのは英語が操れる人。上司が外国人になったり、社内の公用語が英語になったりしますから」
(終)