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インターネットによる音楽配信サービスの利用者が増える中、披露宴などで配信曲を流そうとし、結婚式場から断られるケースが相次いでいる。
配信曲の式場での無断使用が著作権侵害とされているためで、利用者からは「CDと同じように正規購入した曲なのに、配信曲だけ使えないのはおかしい」との声も上がっている。
「この曲は使えないので、CDを買って持って来てください」。友人の結婚披露宴で余興を頼まれた東京都内の女性は、式場担当者からそう言われて戸惑った。
使用を断られたのは、ネット上の配信サイトから有料でダウンロードした音楽データ。女性は「最近はネット配信限定の曲も多い。CDと同じように買った曲なのに、友人の披露宴で使うことが著作権侵害と言われても違和感しかない」と不満を語る。
なぜ式場は、女性が持ち込んだ音楽の使用を断ったのか。
著作権法では、「私的使用」以外の目的で、音楽などを著作権者に無断で複製(コピー)して利用することを禁じている。文化庁著作権課によると、私的使用とは、「4~5人程度で、家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有する」と定義しており、結婚披露宴での利用は、その枠を超えている。配信曲は正規に購入していても、携帯音楽端末やパソコンに入れた段階で複製にあたり、式場で流すことは著作権法に抵触するという構図だ。
日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会は2014年7月、ホテルや式場などが加盟する公益社団法人「日本ブライダル文化振興協会」に対し、結婚披露宴で「コピー楽曲」を無断利用しないよう求める申し入れを行った。
ネット経由の音楽配信は、米アップルが01年に携帯音楽端末「iPod(アイポッド)」を発売し、世界中で急速に広まった。日本ではCDの割合がまだ高いが、国内の音楽売り上げにおける配信曲のシェア(市場占有率)は、05年の9%弱から14年に19%超と倍増している。一方、CDの国内生産額は、05年の3598億円が14年の1840億円と、半分程度に落ち込んでいる。
著作権に詳しい福井健策弁護士は「デジタル機器の進化で質の高いコピー商品が簡単に作れるので、著作権者側が権利を守りたいと思うのも当然だ」とした上で、「海賊版をばらまくわけでもないのに、購入した配信曲を披露宴で使えないのはおかしいという消費者感覚も理解できる。時代に合った解決策を議論することが必要だ」と指摘している。