国産の中古武器を無償や低価格で輸出できるようにするため、防衛装備庁が法整備を検討していることが分かった。武器輸出を原則認めた二〇一四年春の政策転換を受けて進む輸出の仕組みづくりの一つ。同庁装備政策課は新興国を念頭に「関係を強化して安全保障環境を安定させる上でも、新たな法整備は必要だ」とするが、「日本周辺国の軍備増強を助長する」と懸念する声もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/images/PK2016010102100032_size0.jpg
装備政策課によると、防衛装備移転三原則の閣議決定を受け、安全保障や災害救援活動などで防衛省が支援している新興国から、自衛隊が使用する装備の提供を求める声が高まっている。要請している国には、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国や南アフリカ、ブラジルなどが含まれているという。
国有財産の管理・運用を規定する財政法は「無償または適正な価格なくして譲渡してはならない」と規定し、無償や低価格での提供を禁じている。このため、武器輸出を財政法の例外扱いとする法律(特例法)をつくり、一七年以降の国会提出を検討する。輸出対象はヘルメットや防弾チョッキから地雷除去機、装甲車、潜水艦までさまざまな装備を想定する。
日本は過去の国連平和維持活動(PKO)支援などで、他国に重機や地雷探知機など殺傷能力を伴わない装備を提供した際も、特別措置法を制定。提供時期や対象を限定し、無制限に適用されないように歯止めをかけてきた。
防衛省が設置した防衛装備移転に関する有識者の検討会(座長・白石隆政策研究大学院大学学長)は一五年九月、「不要な中古装備品を無償・低価格で移転できる制度が必要」という提案を盛り込んだ報告書をまとめた。これを受け、検討を始めた装備政策課は「技術流出の問題などをクリアする必要はあるが、法整備すれば新興国の要望に応えられる」と説明している。
軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は「新興国への武器輸出は、結果として、日本の周辺国間の軍備増強を助長し、緊張関係を高めることになる」と懸念している。
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ソース
東京新聞:防衛装備庁、中古武器輸出を検討 「無償・低価格」特例法で:社会(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016010102000114.html