■閣議決定根拠に
原発事故後の11年に成立した放射性物質汚染対処特別措置法は、除染などについて「(東電は)請求があったときは
速やかに支払うよう努めなければならない」と定めている。
一方、13年12月20日に閣議決定された福島復興指針には「実施済みまたは現在計画されている除染・中間貯蔵
施設事業の費用は東電に求償(請求)する」とされ、その時点で計画がなかった除染などについては請求の
可否が示されていない。
環境省によると、帰還困難区域では閣議決定前、公共施設などで試験的な除染が行われ、東電は費用請求に応じていた。
だが、同区域の主要道路などの除染は、閣議決定後に計画され請求の対象ではないとして支払いに応じていないという。
取材に対し、同省除染・中間貯蔵企画調整チームの小野洋チーム長は「同じ特措法に基づく除染なのに閣議決定前後で
請求できるかどうか区別されるのはおかしい。帰還困難区域の除染も請求できると考えている」と主張。
一方、経産省資源エネルギー庁電力市場整備室は「閣議決定には計画外の除染を請求するとは書かれていない。
東電には閣議決定に従うよう指導している」と話し、東電広報室は「特措法、原子力損害賠償制度、13年の
閣議決定に基づき、(環境省などから)丁寧に内容を聞いた上で、関係省庁と協議しながら適切に対応していく」
とコメントした。
除染費用は東電の負担と定められているため、10年間で32兆円と設定された復興事業費には含まれず、東電が
請求に応じなければ新たな財源が必要となる。
財務省幹部は「環境省とエネ庁で話をして結論を出すことが必要だ」と話している。
環境省はこれまで12回にわたり除染費用計3810億円を東電に請求。
過去にも除染関連の研究開発や普及啓発費などの支払いに遅れが生じたこと はあったが、東電は基本的に請求に応じ、
計3505億円を支払った。
放射線量の高い帰還困難区域での本格的な実施は大熊町が初めてで、今夏に始まり来年度完了予定の95ヘクタール分の
事業費は200億円超。
同町の残り305ヘクタール分のほか、双葉、浪江、富岡各町なども国に本格的な除染を要望している。
◆解説…「東電救済」省庁間で対立
賠償や中間貯蔵施設事業を含め総額11兆円に達する原発事故の処理費用について、国がどこまで財政支援し、
東京電力を“救済”するのか。
関係省庁や与党内でもさまざまな意見のある支援の線引きをあいまいなままにしてきたことが、新たな難題を生じさせた。
2013年11月、与党内で処理費用の東電任せを見直す提言がまとめられた。
除染などについて新たに特措法を制定して国の財政的関与を打ち出すべきだという声も出たが、世論の反発を考慮し、
最終的に「現在計画されている除染を実施した後のさらなる取り組みについては公共事業的観点から検討する」
という表現に落ち着いた。
だが現在も「取り組み」が除染そのものを指すのか、その他の環境整備を指すのか、提言に関わった議員の中でも
認識が分かれ、「除染を公共事業としてやるべきだ」という議員がいる一方 で、「除染は基本的に東電の責任だ」
という議員もいる。
提言を受けた形でその翌月に閣議決定された福島復興指針も、計画外の除染については記述がない玉虫色の表現となった。
中心部が帰還困難区域となっている大熊町や双葉町では、除染の要望が強 まっている。
ある関係省庁幹部は「帰還困難区域の除染をどう考えるか議論せず、費