見えぬ「春」、将来に期待=治安悪化で大きな代償?民主化要求運動5年・アラブ 諸国
【カイロ時事】中東のアラブ諸国で民主化要求運動が連鎖的に発生し、長期独裁政権が相次いで崩壊した
2011年のいわゆる「アラブの春」から5年の歳月がたった。
各国の人々が望んだ社会的平等はなかなか実現しない一方、独裁政権の重しがなくなった各国で内戦や
過激派伸長により治安が極端に悪化。
「春」の成果はなかなか見えず、人々は混乱後の将来へ期待を託そうとしている状態だ。
5年前に民主化要求運動が激化したアラブ6カ国のうち、長期独裁政権が 崩壊したのはチュニジア、エジプト、
リビア、イエメンの4カ国。
ただイエメンではサレハ前大統領が隠然と政治的な影響力を保っている。
シリアではアサド政権が内戦で支配地域の多くを失いながらも強権統治を続け、バー レーンは限定的な
議会の権限強化などにとどまっている。
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6カ国それぞれの状況は異なるが、政治アナリストのカレム・ヤヒヤ氏は 民主化要求運動を通じて
「表現の自由が広がり、市民社会が活性化されたのは疑いない」と指摘する。
人々の間で政治的な権利意識が広がっているのは確かで、ヤヒヤ氏は「長い歳月を要するだろうが、全ての
アラブ諸国で変革が進んでいくだろう」と強調した。
一方、民主化要求運動は大きな副作用をもたらした。
激しい内戦に陥ったシリアを中心に、この5年間のアラブ各国での衝突による犠牲者は優に30万人を
超えている。
シリア内戦で400万人以上の難民が発生し、その一部 は欧州各国にも押し寄せた。
また、シリアでは権力の空白に乗じて 過激派組織「イスラム国」(IS)が広 大な地域で支配権を確立し、
14年に隣国イラクにまたがる「国家」の樹立を宣言。
15年にはイラクで勢力を縮小させ たが、混乱が拡大するリビアでは支配基 盤を広げた。
イスラム勢力の動向に詳しいアルアハラム政治戦略研究所のアリ・バクル 研究員はアラブの春について、
「もしなければ、ISはこれほど勢力を拡大しなかった。シリア危機もなく、難民の大量発生もなかった」と語った。 (2015/12/31-16:28)
http://www.jiji.com/jc/ci?g=int&k=2015123100137